副業の契約書は、①どの法律に守られるか判定 → ②書いてあっても通らない条項の確認 → ③無料窓口へ相談の順で扱うのが最短です。そして最も多いつまずきは「契約書をもらえないまま始めてしまった」ケースです。契約書がないことは、あなたの落ち度ではなく発注者側の法違反である可能性があります。
2024年11月1日施行のフリーランス法により、取引条件の明示は「交わせたら安心な慣行」から発注事業者の法的義務(3条)に変わりました。公正取引委員会が2026年6月10日に公表した令和7年度の運用状況によると、同法違反の措置は1,552件(勧告10件・指導1,542件)、違反類型の第2位は「取引条件の明示義務違反」1,126件(41.3%)です。つまり、発注書や契約書が出てこない状況は例外ではなく、行政が実際に是正させている典型例です。
「副業 契約書」で検索して出てくる記事の多くは、社員に副業させる会社や外部に発注する会社の目線で書かれています。この記事は逆に、副業する個人が「渡された契約書をどう読むか」「もらえないときに何をするか」に絞って解説します。会社員が副業で業務委託を受ける場合、公正取引委員会のQ&A(Q14)ではその相手方との関係で「特定受託事業者」に該当し得るとされており、副業をしている会社員自身がフリーランス法で守られる可能性があります。この点をまず押さえてください。
本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案への法的助言ではありません。判断に迷う場合は、後述のフリーランス・トラブル110番(無料)などにご相談ください。
副業の契約書とは何で、なぜ「もらえない」が問題になるのですか?
副業の契約書とは、業務内容・報酬・支払期日などの取引条件を当事者間で確定させた記録であり、書面に限らずメールや電磁的方法でも足ります。
ここを誤解している人がとても多いところです。整理すると次の3点になります。
- 契約は諾成契約であり、口頭やチャットでも成立します。 契約書という紙がなくても、依頼と承諾のやり取りがあれば契約は成立しています。メール・チャット・DMの履歴はそれ自体が契約内容の証拠になります。
- 一方で、条件を「明示」するのは発注者側の義務です。 厚生労働省・公正取引委員会・中小企業庁のフリーランス法リーフレット(2024年)によれば、発注事業者は業務委託をしたら直ちに7項目を書面または電磁的方法で明示しなければなりません。
- したがって「契約書がない=泣き寝入り」ではありません。 明示がないこと自体が発注者側の法違反となり得るため、条件の提示を求めることは正当な要求であり、交渉材料にもなります。
発注者が必ず示さなければならない7項目(フリーランス法3条1項)
| # | 明示が義務づけられている項目 | 無い場合の使い方メモ |
|---|---|---|
| 1 | 業務の内容 | 「どこまでが範囲か」を先に確定させないと、無償の追加作業が発生します |
| 2 | 報酬の額 | 金額が示されないままの着手は最も危険。着手前に文面化を求めます |
| 3 | 支払期日 | 受領日から60日以内が上限(4条)。空欄なら期日を定めていない違反の可能性 |
| 4 | 発注事業者と自分(受注者)の名称 | 誰と誰の契約かが特定できないと、請求先が曖昧になります |
| 5 | 業務委託をした日 | 起算日が決まらないと、支払期日の計算ができません |
| 6 | 給付を受領する日/役務提供を受ける日 | 納期と検収の起点です |
| 7 | 給付を受領する場所/役務提供を受ける場所 | 納品先(オンライン納品ならその指定)を特定します |
出典:厚生労働省・公正取引委員会・中小企業庁「フリーランス・事業者間取引適正化等法リーフレット」(2024年)
上の7項目のうち1つでも示されていないなら、次の一文を送るだけで交渉が始まります。「フリーランス法3条1項の取引条件の明示をお願いできますでしょうか。メールでの明示でも差し支えありません。」形式は契約書でなくてよい、という点が交渉のハードルを大きく下げます。
あなたの副業契約は、どの法律・どの窓口で守られますか?
契約書の名称ではなく、発注者の属性と働き方の実態で守られ方が決まるため、次の4問を順に確認してください。
判定チャート:あなたの副業契約、どの法律・どの窓口で守られるか
Q1. 発注元は、従業員を1人でも雇っている事業者ですか?(会社ホームページ、求人情報、登記情報などで確認できます)
- NO → フリーランス法の対象外です(公取委Q&A Q9:発注時点で従業員を使用していない発注者は同法の義務を負いません)。民事ルートへ進みます。契約書での自衛が必須で、相談先は法テラス・各地の弁護士会です。
- YES → Q2へ
Q2. あなたは従業員を雇っていない個人ですか?(副業の会社員もYESです)
- YES → 特定受託事業者としてフリーランス法の保護対象になり得ます(公取委Q&A Q14)。Q3へ
- NO → 従業員を雇用している場合は特定受託事業者に該当しません。民事ルートへ
Q3. 仕事の依頼を断る自由がなく、勤務時間・場所を指定され、指揮命令を受けていますか?
- YES → 労働者性の疑いがあります。この場合はフリーランス法ではなく労働基準監督署ルートです(公取委Q&A Q5:労働基準法上の労働者と認められる場合は特定受託事業者に該当しません)。未払賃金・割増賃金・労災が対象になります。形式が業務委託でも発注者が直接指揮命令している場合は偽装請負として問題になり得ます(厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」昭和61年労働省告示第37号)。
- NO → Q4へ
Q4. トラブルの中身はどれですか?
| トラブルの中身 | 出口(窓口) | 根拠条文 | 費用 | 匿名の可否 |
|---|---|---|---|---|
| (a) 取引条件の書面・メールがない/報酬額が示されない | 公正取引委員会または中小企業庁への申出 | フリーランス法3条 | 無料 | 申出者名を伏せた調査を希望できる場合があります。窓口で相談時に申し出てください |
| (b) 納品(役務提供)後60日を過ぎても未払い | 公正取引委員会または中小企業庁への申出 | フリーランス法4条5項 | 無料 | 同上 |
| (c) ハラスメント/募集情報の虚偽/中途解除の予告なし | 厚生労働省(都道府県労働局) | フリーランス法12〜16条 | 無料 | 同上 |
| (d) 実態が雇用(Q3でYES) | 労働基準監督署 | 労働基準法・労災保険法 | 無料 | 申告者の秘密は保護されます |
どの出口を選ぶ場合でも、共通の入口としてフリーランス・トラブル110番(0120-532-110・無料)が使えます。厚生労働省から第二東京弁護士会が受託して運営しており、弁護士への相談に加えて和解あっせん手続も無料で利用できます(厚生労働省「フリーランス・トラブル110番(和解あっせん)」)。判定に迷ったら、まずここに電話して構いません。
判定後に見る7つの条項
判定が済んだら、手元の契約書は次の7点で確認します(詳しい読み方は後述します)。
| 条項 | 確認するポイント |
|---|---|
| 1. 業務範囲 | 何を・どこまで・いつまでに行うか。成果物の仕様が具体的か |
| 2. 報酬額 | 税込か税抜か。源泉徴収の有無とどちらが負担するか |
| 3. 支払期日 | 締め日と支払日。役務提供日から60日以内か |
| 4. 検収・修正 | 検収の基準と期限、無償修正の回数の上限 |
| 5. 権利の帰属 | 著作権の譲渡範囲(27条・28条の特掲の有無)。実績公開の可否 |
| 6. 秘密保持・競業避止 | 対象情報の範囲と期間。本業とぶつからないか |
| 7. 中途解約 | 解約の予告期間、違約金・損害賠償の定め |
7つのうち1つでも「空欄」「別途協議」のまま残っているなら、内容を確定させてから署名するのが原則です。
「雇用契約書に副業のことが書いてない」ときはどうなりますか?
雇用契約書に副業の記載がない場合は、就業規則や副業規程に定めがないかを順に確認するのが先決です。
確認する順番
- 雇用契約書: 「兼業禁止」「副業の届出」などの条項がないか
- 就業規則: 副業の許可制・届出制、禁止される範囲(競業、信用毀損など)
- 副業規程・誓約書: 別規程として切り出されている会社も増えています
- 人事・総務への確認: 上記に見当たらない場合、口頭ではなくメールやチャットで確認し、回答を残します
「雇用契約書に副業禁止」と書かれていた場合
禁止規定がある場合は、まず範囲を確認します。全面禁止なのか、競業他社での就労や信用を毀損する業務など特定の範囲の禁止なのかで、実際に問題になる場面は変わります。
ここで参考になるのが、厚生労働省のモデル就業規則です。厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定/令和4年7月改定)によれば、モデル就業規則は副業・兼業を原則容認としたうえで、禁止・制限できる場合を次の4類型に限定しています。
| # | 禁止・制限が認められ得る場合 |
|---|---|
| 1 | 労務提供上の支障がある場合 |
| 2 | 企業秘密が漏洩する場合 |
| 3 | 会社の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合 |
| 4 | 競業により企業の利益を害する場合 |
これはあくまでモデル(ひな形)であり、各社の就業規則がそのまま同じ内容とは限りません。ただし、自社の規定がこの4類型からどれだけ離れているかを見る物差しにはなります。
無断で副業を始めると、就業規則違反として社内処分の対象となる可能性があります。どうしても副業をしたい場合は、許可申請や届出の手続きを踏むのが安全です。個別の懲戒処分の有効性は事案ごとの判断になるため、争いになりそうな場合は弁護士にご相談ください。
副業が雇用契約(パート・アルバイト)の場合の落とし穴
副業をアルバイトなどの雇用契約で行う場合、労働時間が本業と通算されるため、本業側で割増賃金が発生することがあります。ガイドラインでは、労働契約の締結順に所定労働時間を通算し、次に実際に行われた順に所定外労働時間を通算するとされています。
労災についても違いがあります。2020年9月1日施行の改正労災保険法により、複数の事業で働く「複数事業労働者」は、業務災害・複数業務要因災害・通勤災害のいずれでも、全事業の賃金を合算して給付基礎日額を算定します(厚生労働省「複数事業労働者への労災保険給付」2020年)。副業先だけの賃金で計算されるわけではない、という点は知っておく価値があります。
また、65歳以上で2社を掛け持ちする場合は、雇用保険マルチジョブホルダー制度(2022年1月1日新設)が使える場合があります。要件は、2つの事業所それぞれの週所定労働時間が5時間以上20時間未満で合計が週20時間以上、各社の雇用見込みが31日以上で、本人がハローワークに申し出ることです(厚生労働省・ハローワーク「雇用保険マルチジョブホルダー制度の概要」2022年)。
さらに2026年10月からは、社会保険の適用拡大により月額8.8万円以上という賃金要件が撤廃され、週20時間以上の勤務で加入対象になる見込みです(企業規模51人超の要件は当面継続)。施行前の制度のため、最新の内容は日本年金機構・厚生労働省の公式サイトでご確認ください。
雇用契約書に副業の記載がない場合でも、「聞かないまま始める」のは避けてください。後から発覚するより、事前に届出をした方が、結果的に副業を続けやすくなります。
契約書に書いてあっても通らない条項はどれですか?
合意していても法律に反する条項は効力が争われるため、以下の6パターンは署名前に必ず確認してください。
| 契約書によくある文言 | 実際の扱い | 根拠 | 受注者が返す一文 |
|---|---|---|---|
| 「報酬は検収完了月の翌々月末払い」 | 役務提供日から60日を超えると違反の可能性 | フリーランス法4条。令和7年度の違反最多類型(1,135件・41.6%) | 「役務提供日から60日以内にしていただけますか」 |
| 「双方合意のうえ、報酬から事務手数料を控除する」 | 合意があっても報酬減額として違反になり得る | フリーランス法5条の禁止行為 | 「控除の内訳と根拠を書面でいただけますか」 |
| 「修正は回数無制限、追加報酬は発生しない」 | 不当なやり直し・給付内容の変更に該当し得る | フリーランス法5条 | 「修正◯回まで、超過分は1回◯円と明記をお願いします」 |
| 「成果物の著作権はすべて甲に帰属する」 | 27条・28条を特掲していないため、翻案権等は受注者に留保されたと推定 | 著作権法61条2項 | 「27条・28条を含む旨を明記するか、含まない前提で確認させてください」 |
| 「報酬は手形で支払う」 | 2026年1月1日以降、原則禁止 | 中小受託取引適正化法(取適法) | 「現金振込への変更をお願いします」 |
| 「本契約に定めのない事項は甲が定める」 | 一方的な代金決定は価格協議義務違反・買いたたきのリスク(令和7年度250件・9.2%) | 取適法・フリーランス法5条 | 「協議のうえ定める、に修正をお願いします」 |
「違反すると本当に是正されるのか」を数字で確認する
公正取引委員会の報道発表(令和8年6月10日)によると、令和7年度のフリーランス法第2章に関する措置は1,552件(勧告10件・指導1,542件)、発注者に支払わせた原状回復金額は1,734万円でした。違反類型の上位2つは、報酬支払期日違反1,135件(41.6%)と取引条件の明示義務違反1,126件(41.3%)です。つまり違反の8割強は、契約書・発注書レベルの基本項目で起きています。
業種別では情報通信業が575件(37.0%)で最多、次いで学術研究・専門技術サービス業326件(21.0%)、運輸業・郵便業135件(8.7%)でした。Web制作・ライティング・デザインといった副業で選ばれやすい分野が集中している点は、知っておいて損はありません。
実際の勧告事例も公表されています。公正取引委員会は2026年7月31日、株式会社エフエム京都に対して勧告を行いました。令和6年11月1日から令和7年11月10日までの間、DJや音源制作者ら39名に明示事項を示さず、29名について報酬支払期日を定めず、3名について受領日から60日を超える支払期日を設定していたことが、フリーランス法3条1項・4条5項に違反すると判断されたものです。2026年6月には株式会社河合楽器製作所(6月22日)、株式会社ベイシア電器(6月24日)にも勧告が出され、いずれも社名が公表されています(公正取引委員会「フリーランス法勧告一覧」)。
また公正取引委員会は放送業・広告業の事業者を集中調査し、令和7年10月までに128名の事業者に対して是正を求める指導を行っています(公正取引委員会 令和7年12月10日報道発表)。業種を絞った一斉調査という執行スタイルが定着しつつあります。
勧告・命令に従わない場合は、50万円以下の罰金(行為者と法人の両罰)に加えて企業名が公表されます。「言っても無駄だろう」と諦める前に、行政が実際に動いている事実を知っておいてください。
「違反になり得る」は「自動的に無効になる」という意味ではありません。個別の判断が必要なため、金額が大きい契約や継続契約では、署名前にフリーランス・トラブル110番などへご相談ください。
契約書をもらえないまま始めてしまいました。72時間で何をすればいいですか?
契約書がなくても、メールで取引条件を確定させれば、そのやり取り自体が証拠として機能します。
■ 0〜24時間:条件をメールで確定させる
- [ ] 発注者へメールまたはチャットで、次の5項目を箇条書きにして送る
- 業務内容(何を・どこまで)
- 報酬額と算定方法(税込/税抜、源泉徴収の有無)
- 支払期日(締め日と支払日)
- 納期・検収方法
- 再委託の可否
- [ ] 文末に「相違なければご返信ください」と添える(返信自体が証拠になります)
- [ ] やり取りを、消えやすい媒体(通話・対面・消去機能のあるチャット)から、残る媒体(メール)へ移す
そのまま使える依頼文の例です。
お世話になっております。着手にあたり、下記の条件について認識を揃えさせていただければ幸いです。
①業務内容 ②報酬額(税込/税抜・源泉徴収の有無) ③支払期日 ④納期と検収方法 ⑤再委託の可否
フリーランス法3条1項に基づく取引条件の明示は、メール等の電磁的方法でも差し支えないとされています。上記についてご返信をいただけますと助かります。
■ 24〜48時間:どの法律が使えるかを判定する
- [ ] 発注者が従業員を使用しているかを、会社ホームページ・求人票・登記情報で確認する(フリーランス法の適用可否=判定チャートQ1)
- [ ] 資本金1,000万円超の法人なら、取適法も重ねて適用され得るか確認する
- [ ] 自分に労働者性がないかを再確認する(時間・場所の拘束、依頼を断る自由の有無=判定チャートQ3)
■ 48〜72時間:窓口に相談する
- [ ] 明示がないままなら、フリーランス・トラブル110番(0120-532-110/無料/平日9:30〜16:30)に相談する
- [ ] または公正取引委員会へ違反被疑事実を申し出る(令和7年度の申出は604件、公取委相談窓口の対応は4,351件)
- [ ] 雇用型と判定された場合は、労働基準監督署へ相談する
■ 証拠として保全するもの
- チャット履歴のエクスポート(スクリーンショットより、日時が残る形式が有効です)
- 納品ファイルの送信記録とタイムスタンプ
- 稼働時間のログ
- 指示のメール
- 見積書・請求書の控え
■ やってはいけないこと
- 口頭での支払い約束をそのまま受け入れる
- 契約書がない状態で著作権譲渡に同意する
- SNSのダイレクトメッセージだけで取引を完結させる運用を続ける
令和7年度の違反類型第2位が「取引条件の明示義務違反」1,126件(41.3%)であることは、契約書が出てこない状況が例外ではないことを示しています。自分が特別に運が悪いわけではないと考えて、淡々と手続きを進めてください。なお、フリーランス法では申出をしたことを理由とする契約解除などの不利益取扱いは禁止されています。
副業の業務委託契約書は請負と準委任のどちらですか?
請負は成果物の完成、準委任は業務の遂行に責任を負う契約で、報酬の発生条件と修正義務の範囲が変わります。
| 項目 | 請負 | 準委任 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 民法632条 | 民法643条・656条 |
| 責任の対象 | 成果物の完成 | 業務の適切な遂行(善管注意義務) |
| 報酬の発生 | 完成・引渡しが原則 | 業務の遂行に応じて発生 |
| 契約不適合責任 | あり(民法562条以下) | 原則なし |
| 副業での例 | 記事納品、ロゴ制作 | コンサルティング、SNS運用代行 |
| 印紙税 | 金額の記載があれば第2号文書として課税 | 不課税(印紙不要) |
たとえばWebライターが請負で契約すると、記事が検収されるまで報酬は原則発生せず、納品後も契約不適合責任として修正義務を負う場合があります。自分の契約がどちらの性質かを知ることが、修正・報酬トラブルの予防線になります。
印紙税については、国税庁の印紙税額一覧表で、金額の記載がある請負契約は第2号文書(金額に応じて変動)、金額の記載がない継続的取引の基本契約は第7号文書で一律4,000円とされています。委任・準委任契約は不課税です。電子契約であれば印紙は不要とされています。
労災・社会保険はどちらを選ぶかで変わります
契約類型の選択は、事故が起きたときの補償に直結します。
- 雇用型: 労災保険の対象です。2020年9月1日施行の改正により、複数事業労働者は全ての勤務先の賃金額を合算した額を基礎に給付基礎日額が算定されます。複数勤務先の業務上の負荷を総合的に評価する「複数業務要因災害」も新設されました。
- 業務委託型: 労災保険は原則として適用されません。ただし2024年11月1日から、特別加入の対象が全業種のフリーランス(特定受託事業者)に拡大され、副業中のケガも補償対象にできるようになりました(保険料は全額自己負担)。
契約書のタイトルは法的性質を決めません。「委託」と書いてあっても、条項の中身と働き方の実態で判断されます。
副業の契約書テンプレートはどこで手に入りますか?
テンプレートは公的機関のひな形を出発点にし、法律が守ってくれない部分を自分で書き足すのが実務的です。
出発点にできる公的資料
- 内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の連名による「フリーランスとして業務を行う方へのガイドライン」(2021年3月)には、発注書面に記載すべき事項が整理されています。
- 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法 Q&A」には、3条通知に必要な明示事項の考え方が示されています。
- 文化庁「誰でもできる著作権契約マニュアル」(2023年)には、著作権の譲渡・利用許諾の書き方が解説されています。
法律の義務ではないので、自分で足す5項目
前述の7項目は発注者の明示義務ですが、次の5項目は義務ではありません。テンプレートから抜け落ちていても違反にはならないため、自分で足さないと誰も守ってくれない領域です。
| 足す項目 | 無いとどうなるか | そのまま送れる依頼文例 |
|---|---|---|
| (a) 修正・リテイクの回数上限と超過時の追加報酬 | 無償修正が際限なく続き、実質時給が下がります | 「修正は◯回までとし、超過分は1回◯円を追加報酬とする旨を明記いただけますでしょうか」 |
| (b) 著作権の扱い(27条・28条の特掲/著作者人格権不行使条項の有無) | 「全部譲渡」と書いても27条・28条を特掲しないと翻案権等は譲渡人に留保されたと推定されます(著作権法61条2項) | 「著作権譲渡の範囲について、27条・28条を含むか否かを明記いただけますでしょうか」 |
| (c) 中途解約時の既履行分の精算方法 | 途中で打ち切られた場合、着手済みの作業分が無報酬になる恐れがあります | 「中途解約時は、解約日までの既履行部分について出来高で精算する旨を追記いただけますでしょうか」 |
| (d) 秘密保持・競業避止の範囲と期間 | 本業の就業規則と衝突したり、期間の定めがなく将来の仕事を制約されることがあります | 「秘密保持と競業避止の対象範囲・期間をご明示いただけますでしょうか」 |
| (e) 実績としてのポートフォリオ掲載可否 | 実績として公開できず、次の受注につながりません | 「守秘に配慮したうえで、実績としての掲載可否をご確認いただけますでしょうか」 |
テンプレートを使うときの注意点
- 発注側のテンプレをそのまま受け入れない: 世に出回るテンプレートの多くは発注者目線で作られており、著作権の全部譲渡、修正回数の無制限、長い支払サイトが初期値になっていることがあります。
- 必ず埋める3か所: 報酬額と算定方法、検収の基準と期限(無償修正の回数を含む)、成果物の権利帰属(著作権法27条・28条の扱い)。ここが空欄のテンプレートは、そのままでは機能しません。
- 弁護士のリーガルチェックは費用対効果で判断する: 業務委託契約書のリーガルチェックをスポットで弁護士に依頼した場合の費用相場は5万〜15万円程度とされています(内容が複雑な場合は10万〜20万円)。月数万円規模の副業では費用倒れになる可能性があるため、まずは無料のフリーランス・トラブル110番で相談し、金額の大きい契約や長期の継続契約に絞って有料のチェックを検討するのが現実的です。
署名前の5ステップ
- 全文を通読し、意味の分からない用語をリスト化する: 「検収」「契約不適合」「専属的合意管轄」などを放置しないことが出発点です。
- 7つの条項と照合し、空欄・欠落を探す: 「別途協議」「甲の定めによる」といった曖昧な表現に印を付けます。
- 疑問点をメールで質問し、回答を文書で残す: 電話で聞いた内容も「お電話の内容を確認させてください」とメールで復唱して証拠化します。
- 修正の合意は契約書本体か覚書に反映してもらう: メール上の合意だけより、契約書への反映が確実です。
- 締結後の契約書と関連書類を保管する: PDFや電子契約の控え、見積書、発注メールを案件ごとに1つのフォルダへまとめます。
条件の確認は「対立」ではなく「認識合わせ」です。質問しただけで契約を打ち切る発注者とは、むしろ契約しない方が安全といえます。
副業のフリーランス契約でトラブル。相談先はどこで、強制力はどこまでありますか?
窓口選びは「費用」と「相手への強制力」の対比で決めるのが実務的です。
副業の契約トラブル 相談先5つ 早見表
| 窓口 | 扱えるトラブル | 根拠法・制度 | 費用 | 相手への強制力 | 匿名/秘密の扱い | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|---|---|
| フリーランス・トラブル110番(0120-532-110) | 業務委託の契約・報酬トラブル全般 | 厚生労働省委託/第二東京弁護士会が運営 | 無料 | 和解あっせんは合意ベースで、強制力はありません | 相談内容の秘密は守られます | 何から手をつけるか分からない段階の最初の一歩。令和7年度は13,400件の相談 |
| 公正取引委員会・中小企業庁への申出 | 取引条件の不明示、60日超の未払い、買いたたき、報酬減額 | フリーランス法3条・4条・5条 | 無料 | 勧告・命令+社名公表。従わなければ50万円以下の罰金 | 申出者への不利益取扱いは禁止 | 発注者が話し合いに応じない、同種の被害が複数いる場合。令和7年度は申出604件・措置1,552件 |
| 都道府県労働局(厚生労働省) | 募集情報の的確表示、育児介護への配慮、ハラスメント、中途解除の予告 | フリーランス法12〜16条 | 無料 | 指導・勧告 | 相談者の秘密は保護されます | 金銭ではなく就業環境・ハラスメントが問題の場合 |
| 労働基準監督署 | 実態が雇用(労働者性あり)の場合の未払賃金、割増賃金、労災 | 労働基準法・労災保険法 | 無料 | 是正勧告 | 申告者の秘密は保護されます | 時間・場所を拘束され、依頼を断れない働き方だった場合 |
| 簡易裁判所(少額訴訟・支払督促) | 報酬の未払い全般 | 民事訴訟法 | 訴額に応じた手数料 | 確定判決・仮執行宣言により差押えが可能=唯一の強い強制力 | 公開の手続です | 相手が支払いに応じず、最終的に回収したい場合 |
出典:公正取引委員会 令和8年6月10日報道発表、厚生労働省「フリーランス・トラブル110番(和解あっせん)」、裁判所「少額訴訟」
この表の要点は、費用と強制力が逆向きになっていることです。 無料の窓口は相談しやすい一方で、和解あっせんは合意ベースのため相手が応じなければ終わります。行政ルート(公取委・中企庁)は社名公表という強い圧力を持ちますが、あなたの報酬を直接取り立ててくれる制度ではありません。実際にお金を差し押さえられるのは裁判所ルートだけです。だからこそ、無料窓口で状況を整理しながら、並行して裁判所ルートの準備を進めるのが合理的です。
報酬が支払われない場合の進め方
- 契約書・納品データ・請求書・メールを時系列で整理する
- メールで金額と支払期日を明記して請求する
- 応じなければ内容証明郵便で請求する(請求の事実を証拠化)
- 簡易裁判所の支払督促や少額訴訟を検討する
- 並行してフリーランス・トラブル110番に相談し、和解あっせんの利用を検討する
少額訴訟は、60万円以下の金銭支払を求める訴えについて、原則1回の審理で判決に至る手続です。同一人が同じ簡易裁判所で利用できるのは年10回までで、手数料は訴額に応じた額を電子納付します(裁判所「少額訴訟」2025年)。支払督促は金額に上限がなく書面のみで進みますが、相手が異議を述べると通常訴訟へ移行します。
フリーランス法では、報酬の支払期日は物品等の受領日または役務提供日から起算して60日以内のできる限り短い期間内とされています(再委託の場合は元委託の支払期日から30日以内)。これを超える支払遅延は、公正取引委員会への申出の対象になり得ます。
フリーランス法では、申出をしたことを理由とする契約解除などの不利益取扱いは禁止されています。相談や申出をためらう必要はありません。
やってはいけないNG対応
空欄のある契約書への署名、SNSでの暴露、一方的な業務放棄は、自分の立場を悪くするNG対応の代表例です。
- 空欄・「別途協議」のまま署名する: 後から不利な内容が確定しても争いにくくなります。
- 口頭の条件変更をそのまま受け入れる: 変更内容は必ずメールで復唱し、記録に残します。
- 未払いをSNSで実名暴露する: 名誉毀損や営業妨害の責任を問われる恐れがあり、交渉上も不利に働きます。
- 一方的に業務を放棄する: 未払いがあっても、対応次第ではこちらの債務不履行を主張される恐れがあります。中途解約は契約書の手順に沿って進めます。
- 請求せずに放置する: 報酬債権の消滅時効は原則5年(民法166条)です。時間が経つほど証拠も散逸します。
- 本業の就業規則を確認せずに始める: 届出制・許可制を見落とすと、報酬以前に社内で問題になります。
「相手が悪いから何をしてもいい」とはなりません。反撃ではなく、記録と公的窓口を武器にしてください。
まとめ:判定 → 逆引き → 窓口の順で動きます
副業の契約書は、契約類型の判定から始めて、通らない条項を確認し、無料窓口につなぐ順番が最短です。
- まず判定チャートでフリーランス法ルート/労働基準監督署ルート/民事ルートのどれかを見極める
- 会社員が副業で業務委託を受ける場合、「特定受託事業者」としてフリーランス法で守られ得る(公取委Q&A Q14)
- 契約書がなくても契約は成立している。むしろ明示がないこと自体が発注者側の法違反になり得る(3条1項の7項目)
- 支払期日は受領日・役務提供日から60日以内。合意があっても報酬の減額は違反になり得る
- 無料窓口は相談しやすく、裁判所ルートだけが差押えという強制力を持つ。この違いで窓口を選ぶ
- 迷ったらフリーランス・トラブル110番(0120-532-110・無料)、雇用の実態があれば労働基準監督署
次の行動は「手元の契約書を7つの明示項目と照合すること」です。契約書がない案件があるなら、今日、5項目の条件確認メールを送ってください。
よくある質問
副業の契約書について検索されることが多い疑問に、公的な情報をもとに結論から簡潔にお答えします。
Q1. 雇用契約書に副業のことが書いてない場合、副業してもいいですか?
雇用契約書に記載がなくても、就業規則や副業規程に定めがある場合が多いため、まずそちらを確認してください。どこにも記載が見当たらない場合は、人事・総務にメールなど記録の残る形で確認するのが安全です。厚生労働省のモデル就業規則は副業・兼業を原則容認とし、禁止・制限できる場合を4類型(労務提供上の支障/企業秘密の漏洩/名誉・信用の毀損/競業による利益侵害)に限定しています(厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」令和4年7月改定)。
Q2. 契約書なしで仕事を始めてしまいました。今からできることは?
今からでも、業務内容・報酬額と算定方法・支払期日・納期と検収方法・再委託の可否の5項目をメールで送り、「相違なければご返信ください」と確認するのが有効です。フリーランス法3条1項は7項目の明示を発注者に義務づけており、書面だけでなくメール等の電磁的方法も認められています。提示を求めること自体が正当な要求です。過去のチャットや見積もりのやり取りも証拠になるため、削除せず保存してください。
Q3. 副業の業務委託契約書に最低限入れるべき項目は?
法律上、発注者が明示しなければならないのは7項目(業務内容/報酬額/支払期日/両者の名称/委託日/給付を受領する日/受領場所)です。これに加えて、修正回数の上限、著作権の扱い、中途解約時の精算、秘密保持・競業避止の範囲、実績掲載の可否は義務ではないため自分で足す必要があります。特に見落とされやすいのが著作権で、「著作権をすべて譲渡する」と書かれていても、著作権法27条・28条を特掲していない場合は翻案権等が譲渡人に留保されたと推定されます(著作権法61条2項)。
Q4. 副業の契約書テンプレートをそのまま使っても大丈夫ですか?
ひな形は出発点として有用ですが、そのままの使用はおすすめできません。流通しているテンプレートの多くは発注者目線で作られており、著作権の全部譲渡や無制限の修正対応が初期値になっている場合があります。報酬・検収・権利帰属の3か所は必ず自分の案件に合わせて確定させてください。公的資料としては、関係4府省庁連名の「フリーランスとして業務を行う方へのガイドライン」(2021年3月)や文化庁「誰でもできる著作権契約マニュアル」(2023年)が参考になります。
Q5. 「雇用契約書に副業禁止」と書かれていたら、絶対に副業できませんか?
禁止規定がある以上、無断で始めれば就業規則違反として社内処分の対象になり得ます。ただし、厚生労働省のモデル就業規則は副業を原則容認とし、禁止・制限できる場合を前述の4類型に限定しています。まずは許可申請・届出の手続きがないかを確認し、範囲(全面禁止か、競業など特定範囲か)を読み解いてください。個別の懲戒処分の有効性は事案ごとの判断になるため、争いになりそうな場合は弁護士にご相談ください。
Q6. 副業の契約書を交わすと本業の会社に知られますか?
契約書そのものから勤務先に通知されることは通常ありません。ただし、副業所得によって住民税額が変わると、特別徴収を通じて勤務先が変化に気づく場合があります。なお、給与以外の所得(収入−経費)が年20万円を超えると所得税の確定申告が必要で(所得税法121条)、20万円以下でも住民税の申告は必要とされています。就業規則で副業の可否と届出ルールを先に確認しておくのが安全です。
Q7. 業務委託でも最低賃金や残業代は守られますか?
原則として業務委託は労働法の適用外ですが、実態として指揮命令を受けて働いている場合は労働者と判断され、保護の対象になる場合があります。判断基準として「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)があり、形式上は業務委託でも発注者が直接指揮命令している場合は偽装請負として問題になり得ます。この場合、相談先はフリーランス法の窓口ではなく労働基準監督署に切り替わります(公取委Q&A Q5)。
Q8. 契約書のチェックは誰に無料で頼めますか?
フリーランス・トラブル110番(0120-532-110)では、契約内容の相談を弁護士に無料で行えます。収入等の要件を満たす場合は、法テラスの無料法律相談も利用できます。弁護士へのスポット依頼によるリーガルチェックは5万〜15万円程度が相場とされているため、報酬額が大きい契約や長期の継続契約に絞って検討するのが現実的です。
Q9. 発注者が個人でも、フリーランス法で守られますか?
発注者が従業員を1人も使用していない場合、その業務委託についてフリーランス法上の義務(取引条件の明示、60日以内の支払など)は発生しません(公正取引委員会Q&A Q9)。この場合は民法の一般ルールに戻るため、契約書やメールで条件を残す自衛がより重要になります。相談先は法テラスや各地の弁護士会、回収を目指すなら簡易裁判所の支払督促・少額訴訟が中心になります。
法律や制度は改正される場合があります。最新の情報は、公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁など各公的機関の公式サイトでご確認ください。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案への法的助言ではありません。具体的なトラブルについては、フリーランス・トラブル110番や弁護士などの専門家にご相談ください。
最終確認日:2026年8月21日




