相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です(民法915条1項)。ただし本当の落とし穴は日数ではありません。「まだ日数が残っているのに放棄する権利を失う行為」と、「そもそも自分の起算日が死亡日ではない可能性」の2つです。
この記事は、起算日の特定 → その日を裏づける証拠の確保 → 期限内にやってはいけない行為の判定 → 放棄後に残る保存義務まで、相続順位別の時系列として組み立てています。第一順位(子)と第三順位(兄弟姉妹)では、2024年3月開始の戸籍広域交付の対象可否によって実質的に動ける日数が大きく変わるため、その差も計算式で示します。
最高裁判所「令和6年司法統計年報 家事編」(2025)によると、2024年の相続放棄申述受理件数は308,753件で、統計上初めて年間30万件を超えました。相続放棄はもはや例外的な手続きではありません。
相続放棄の期限はいつから3か月?起算日診断チャート
相続放棄の期限の起算日は死亡日ではなく、被相続人の死亡と自分が相続人であることの両方を知った日とされています。
裁判所(最高裁判所)「相続の放棄の申述」(2026)でも、申述期間は「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」と案内されています。多くの方は死亡の連絡を受けた日が起算日になりますが、疎遠だった親族の相続や、先順位者の放棄で順位が回ってきた場合は起算日が後ろにずれます。
起算日診断チャート|あなたの3か月はいつから始まっているか
次の5問に順番に答えてください。最後に【起算日候補】【裏づけ証拠】【残り日数】【次の一手】の4点が出ます。
Q1. あなたの相続順位は?
- 配偶者/第一順位(子・孫) → Q2へ
- 第二順位(父母・祖父母) → Q2へ
- 第三順位(兄弟姉妹・甥姪) → Q2へ(※戸籍収集の負担が最も重い順位です。後述の計算式を必ず確認してください)
Q2. 被相続人の死亡を知ったのはいつですか。 日付を書き出してください( 年 月 日)。
Q3. 自分が相続人になったと知ったきっかけは?
| 選択肢 | 起算日候補 | 裏づけになる証拠 |
|---|---|---|
| a. 死亡の連絡と同時に知った | 死亡を知った日 | 訃報の連絡記録、通話履歴、葬儀案内 |
| b. 先順位者から「放棄した」と連絡が来た | その連絡を受けた日 | メール・LINEの受信日時、通話履歴 |
| c. 債権者・カード会社の督促状が届いた | 督促状が到達した日 | 封筒の消印、内容証明の配達記録 |
| d. 家庭裁判所から照会書が届いた | 照会書を受け取った日 | 家裁の書面と封筒 |
| e. 相続放棄申述の有無の照会で判明した | 回答書を受け取った日 | 家裁からの照会回答書 |
Q4. 死亡日から3か月を超えていますか。 超えている場合、次の3つにY/Nで答えてください。
- 相続財産が全く存在しないと信じていた → Y / N
- 被相続人との交際状態などから、財産調査を期待することが著しく困難な事情があった → Y / N
- そう信じたことに相当な理由がある → Y / N
3つすべてYなら、最高裁 昭和59年4月27日判決の枠組みにより、相続財産の全部または一部の存在を認識した時から熟慮期間を起算できる余地があります。
Q5. あなたが相続人になるはずだった人が、承認も放棄もしないまま亡くなっていませんか。 Yesなら再転相続です。最高裁 令和元年8月9日判決は、民法916条の「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、承認・放棄をしないで死亡した者の相続人が、当該死亡者の相続人としての地位を自己が承継した事実を知った時をいい、第1次相続を知っていたかどうかは問わないとしました。起算日が繰り下がる可能性があります。
出力(4点セット)
| 項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 起算日候補 | 年 月 日(Q3で選んだ経路の日付) |
| 裏づけ証拠 | 消印のある督促状/内容証明の配達記録/家裁の照会書/通帳の記帳日 など |
| 残り日数 | 起算日+3か月 − 今日 = 日 |
| 次の一手 | 即申述/期間伸長の申立て/上申書を添えて申述 |
b〜eの経路を選んだ方は、起算日が死亡日より後ろにずれる可能性が高い方です。「第三順位の期限」と「期限を過ぎた場合」の章を重点的にお読みください。
証拠は「捨てない」ではなく「日付が残る形で保管する」
起算日は自己申告ではなく、後日債権者から争われる可能性がある事実です。督促状は封筒ごと保管し、消印の日付を残してください。連絡がLINEやメールなら受信日時のスクリーンショット、電話なら通話履歴と当日のメモが裏づけになります。
日数は残っているのに相続放棄できなくなる行為
読者の実際の敗因は日数超過よりも、相続財産に手を付けたことによる法定単純承認(民法921条1号)にあります。
民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を「処分」したときは単純承認したものとみなすと定めています(保存行為と短期賃貸借は除かれます)。以下は実務でよく問題になる行為の判定表です。個別事情で結論が変わるため、△と○の行為は行う前に専門家へ確認してください。
判定表|その行為は「処分」に当たるか
| 行為 | 921条1号の「処分」に当たりうるか | 実務での一般的な扱い | 安全な代替手段 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 被相続人名義の預金の解約・引き出し | ○ | 典型的な処分行為とされ、最も危険 | 口座は凍結のまま放置し一切動かさない | 民法921条1号 |
| 死亡保険金の受取(受取人が相続人本人) | × | 受取人固有の財産と解され、相続財産ではない | そのまま受領可(税務上のみなし相続財産には注意) | 保険金請求権の性質 |
| 遺族年金の受給 | × | 受給権者固有の権利とされる | そのまま受給可 | 各年金法の受給権 |
| 相続財産から葬儀費用を支出 | △ | 身分相応の範囲なら単純承認に当たらないとした裁判例あり(金額・事情による個別判断) | 相続人自身の資金から支出し領収書を保管 | 民法921条1号/裁判例 |
| 社会通念を超える高額な仏壇・墓石の購入 | ○ | 相当性を超える支出は処分と評価されるおそれ | 自己資金・常識的な範囲にとどめる | 民法921条1号 |
| 賃貸物件の解約と残置物の処分 | ○ | 解約権の行使と動産処分の双方が問題になる | 大家に事情を説明し、放棄予定である旨を書面で伝える | 民法921条1号 |
| 携帯電話・サブスクの解約 | △ | 債務の増加を止める行為だが、解約返戻金の受領は危険 | 解約のみ行い、返戻金は受け取らない | 民法921条1号 |
| 自動車の名義変更・売却 | ○ | 名義変更は権利の行使、売却は明確な処分 | 一切触れず、保管場所も動かさない | 民法921条1号 |
| 経済的価値の低い形見分け | △ | 価値の乏しい物は問題になりにくいが線引きが曖昧 | 高価品・換価性のある物は手を付けない | 民法921条1号 |
| 空き家の応急修繕(雨漏り対策等) | × | 財産の現状維持は保存行為として除外されうる | 費用は自己資金から支出し記録を残す | 民法921条1号ただし書 |
| 被相続人の債務の一部弁済(相続財産から) | ○ | 相続財産の処分に当たると評価されうる | 「熟慮期間中のため回答を控えます」と伝えるにとどめる | 民法921条1号 |
| 相続人自身の固有資金からの支払い | × | 相続財産を動かしていないため処分に当たらないと解される | 資金の出所が分かる記録(自分の口座からの振込)を残す | 民法921条1号 |
放棄した「後」でも単純承認とみなされる行為
受理通知書が届いても安心はできません。民法921条3号は、放棄をした後であっても次の行為があれば単純承認とみなすと定めています。
- 相続財産の全部または一部を隠匿した
- 私(ひそか)にこれを消費した
- 悪意で相続財産の目録中に記載しなかった
「もうやってしまったかもしれない」という場合も、行為の内容・金額・時期で評価が分かれます。自己判断で断念せず、経緯を正確に伝えて弁護士の判断を仰いでください。
相続放棄の第三順位(兄弟姉妹)の期限と証拠の残し方
第三順位(兄弟姉妹・甥姪)の期限は、先順位者の放棄で自分が相続人になったと知った時から3か月とされています。
「知った時」を何で立証するか
上位の解説記事はここを一行で片づけますが、実務では「誰が・いつ・何によって知ったか」を示す資料が結論を左右します。次のいずれかを確保してください。
| 知ったきっかけ | 立証に使える資料 | 保管のコツ |
|---|---|---|
| 債権者からの督促状 | 封筒の消印、内容証明の配達記録 | 封筒を捨てず中身とセットで保管 |
| 家庭裁判所からの照会書 | 照会書本体と送付用封筒 | 受領日をメモして同封 |
| 相続放棄申述の有無の照会結果 | 家裁からの回答書 | 照会の申請日と回答受領日を両方記録 |
| 放棄した親族からの連絡 | メール・LINEの受信日時、通話履歴 | スクリーンショットを日付表示のまま保存 |
先順位者が本当に放棄したかどうかは、家庭裁判所への「相続放棄・限定承認の申述の有無の照会」で確認できます。放棄した親族の言葉だけを信じて動くのではなく、この照会結果を起算日の裏づけとして残す方法が安全とされています。
第三順位が直面する戸籍の壁(2024年3月〜)
2024年3月1日施行の改正戸籍法により、本籍地以外の市区町村窓口で戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本を取得できる「広域交付」が始まりました。ただし請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られ、兄弟姉妹および代理人は対象外です(戸籍抄本・戸籍の附票も対象外)。
つまり第三順位の相続人は、被相続人の出生から死亡までの戸籍と先順位者の戸籍を、従来どおり本籍地へ郵送請求しなければなりません。同じ3か月でも、実際に判断に使える日数は直系の相続人よりはるかに短くなります。
再転相続が重なった場合
相続人になるはずだった人が承認も放棄もしないまま亡くなった場合は再転相続です。最高裁 令和元年8月9日判決により、起算日は「その死亡者の相続人としての地位を自己が承継した事実を知った時」とされ、第1次相続を知っていたかどうかは問われません。該当しそうな方は、自己判断せず専門家に相続関係図を見てもらってください。
相続放棄の期限が過ぎたらどうする?申述の実務
期限を過ぎて見えても、財産が無いと信じた相当な理由があれば、知った時から3か月と扱われる余地があります。
最高裁 昭和59年4月27日判決は、①相続財産が全く存在しないと信じたために放棄しなかった、②被相続人との交際状態等から財産調査を期待することが著しく困難な事情があった、③そう信じたことに相当な理由がある、の3要件を満たす場合、熟慮期間は相続財産の全部または一部の存在を認識した時から起算するとしました。
申述書の「相続の開始を知った日」欄をどう書くか
この欄に単純に死亡日を書いてしまうと、書面上は明らかな期限切れになります。3か月経過後に申述する場合は、督促状が届いた日など財産の存在を認識した日を記載し、その理由を上申書(事情説明書)で説明する運用が実務で行われているとされています。
上申書に書くべき事実と添付資料
| 書くべき事実 | 添付したい資料 |
|---|---|
| 被相続人との交流状況(いつから疎遠だったか) | 別居の経緯が分かる住民票の履歴など |
| 財産も債務も無いと信じていた理由 | 遺産分割の話が一度も無かった経緯のメモ |
| 債務の存在を知った日時と経緯 | 督促状の封筒(消印)、内容証明の配達記録 |
| 知ってから申述までの経過日数 | 相談記録、戸籍請求の受付控え |
「受理された=安心」ではない
家庭裁判所は、明らかな却下理由が無い限りまず受理する運用とされ、司法統計を集計した専門家解説によれば却下率は令和5年で受理281,681件に対し却下395件、およそ0.14%と極めて低い水準です。
この数字は「出せばほぼ通る」と読めますが、裏返せば受理は有効性が確定した状態ではないということです。後日、債権者が訴訟で「熟慮期間はすでに経過していた」と争う余地は残ります。だからこそ受理を目的化せず、上申書と証拠で起算日の主張を固めておく必要があります。
期限内でも判断が終わらないときは「伸長」
熟慮期間内であれば、期間伸長の申立てができます。裁判所(最高裁判所)「相続の承認又は放棄の期間の伸長」(2026)によると、申立てができるのは利害関係人(相続人・共同相続人・受遺者等)または検察官で、申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所、費用は相続人1人につき収入印紙800円と連絡用郵便切手です。申立書の書式と記載例も裁判所ウェブサイトで公開されています。
伸長される期間に法定の上限規定はなく家庭裁判所の裁量ですが、複数の司法書士・弁護士事務所の実務解説では1〜3か月程度が中心とされています。必ず3か月の熟慮期間内に申し立てる必要がある点にご注意ください。
起算日から逆算する期限カレンダーと実質判断日数
相続放棄の3か月は単独では動かず、準確定申告・相続税申告・相続登記などと同時並行で進みます。
起算日Dから逆算する期限カレンダー
診断チャートで出した起算日Dを入れて、次の5本の締切を書き出してください。
| 手続き | 期限 | あなたの締切 |
|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認の申述 | D+3か月 | 年 月 日 |
| 準確定申告 | D+4か月 | 年 月 日 |
| 相続税の申告・納付 | D+10か月 | 年 月 日 |
| 遺留分侵害額請求 | 侵害を知った時から1年 | 年 月 日 |
| 相続登記の申請 | 取得を知った日から3年(2024年4月1日義務化) | 年 月 日 |
政府広報オンライン「不動産の相続登記義務化」(2025)によると、相続登記は2024年4月1日から義務化され、正当な理由なく3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。義務化前に発生した相続については2027年3月31日が期限とされ、相続人申告登記の制度も新設されました。
実質判断日数の計算式
3か月=約90日をそのまま考える時間と見るのは危険です。次の式で、実際に判断に使える日数を出してください。
``` 実質判断日数 = 90日 −(戸籍収集日数)−(財産調査日数)−(申述書作成・郵送日数) ```
戸籍収集日数(相続順位で分岐)
| 相続順位 | 広域交付 | 目安日数 |
|---|---|---|
| 第一順位(子)・第二順位(親) | 使える(直系のため) | 3〜7日 |
| 第三順位(兄弟姉妹・甥姪) | 使えない(対象外) | 21〜40日 |
財産調査日数: 信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)への相続人からの開示請求は、戸籍等の必要書類を揃えるところから始まるため数週間かかる場合があります。これに名寄帳・固定資産評価証明の取得日数を足してください。
申述書作成・郵送日数: 書式の入手、記載、郵送で数日〜1週間程度を見込みます。
判定: 結果が0日以下、または10日未満になった方は、財産調査の結論を待たずに期間伸長の申立てへ進んでください。
伸長申立書の「伸長を求める理由」に書く3要素
- 財産の所在が分散している事情(不動産が遠方、取引金融機関が複数など)
- 調査の具体的な進捗(信用情報の開示請求日、照会中の機関名)
- 必要期間の見積り(あと何か月で調査が完了する見込みか)
漠然と「時間がほしい」と書くのではなく、調査に着手済みであることと必要日数の根拠を示す形が実務では一般的とされています。
相続放棄した後に残る義務と、放棄以外の選択肢
2023年4月1日施行の改正民法940条1項により、保存義務を負うのは放棄の時に相続財産を「現に占有」していた人に限定されました。
占有の有無で変わる放棄後の立場
| あなたの状況 | 保存義務 | 実務上の負担 |
|---|---|---|
| 実家に住んでいた・鍵を管理していた | 負う可能性が高い | 相続財産清算人に引き渡すまで滅失・損傷を避ける最小限の保存が必要 |
| 遠方に住み、家財にも触れていない | 原則として負わない | 放棄で関係を終えられる |
改正により義務の内容は滅失・損傷を避ける最小限の「保存」に整理され、あわせて相続財産管理人は「相続財産清算人」へ名称変更されました。ただし完全に離脱するには相続財産清算人の選任が必要になる場合があり、その際は予納金が高額になることがあるとされています。実家に住んでいる方は、放棄の前段階でこの点を専門家に確認してください。
放棄しない選択肢|相続土地国庫帰属制度
借金は無いが不要な土地だけが問題という場合、放棄以外の道もあります。法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(2026)によると、令和8年(2026年)5月31日現在で申請5,545件・国庫帰属2,762件(宅地1,018件、農用地879件、森林186件、その他679件)に達しています。
ただし法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」(2026)のとおり、負担金は承認通知が到達した翌日から30日以内に納付が必要で、分割払いはできません。相続放棄は財産も債務もまとめて手放す制度、国庫帰属は特定の土地だけを手放す制度という違いを理解して選んでください。
2026年時点の制度変化
- 2026年4月1日から、不動産所有者の氏名・住所の変更登記も義務化されました。承継する側の負担が増えたため、放棄か承継かの判断材料が変わっています。
- 相続登記義務化(2024年4月1日)の3年期限が最初に到来するのは2027年4月以降で、2026年時点では施行後に発生した相続に対する過料の適用事例はまだ報告されていないとされています。
- 2026年5月21日に民事訴訟法改正が全面施行され、インターネットによる申立て・記録の電子化・電子納付が本格運用に入りました。家事事件手続についても2022年5月25日公布の改正法に基づき段階的にデジタル化が進行中で、家庭裁判所への申立て方法は今後変わりうるため、手続き前に管轄の家庭裁判所の最新案内をご確認ください。
相続放棄はいつまでに何をする?相談先と申述の実務
申述先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で、費用は申述人1人につき収入印紙800円と連絡用郵便切手です。
裁判所(最高裁判所)「相続の放棄の申述」(2026)によると、連絡用郵便切手の額は裁判所ごとに異なり、電子納付も可能とされています。申述は郵送でも受け付けられ、後日届く照会書に回答すると、問題がなければ相続放棄申述受理通知書が届きます。
自力で進められる人・相談したほうがよい人
| 条件 | 判断 |
|---|---|
| 期限内・直系(子/親)・遺産に一切触れていない | 自力での申述を検討できる |
| 3か月を経過している | 上申書の組み立てが結果を左右するため相談を推奨 |
| 第三順位(兄弟姉妹・甥姪) | 戸籍収集の負担が重く、起算日の立証も必要なため相談を推奨 |
| 預金の引き出しなど、遺産に触れた心当たりがある | 単純承認の評価が絡むため相談を推奨 |
| 実家に居住している・鍵を管理している | 放棄後の保存義務が残るため相談を推奨 |
主な相談先
| 相談先 | 特徴 | 費用 |
|---|---|---|
| 法テラス(日本司法支援センター) | 収入等の条件を満たせば同一問題につき3回まで無料相談 | 無料(条件あり) |
| 弁護士 | 期限経過後の対応や債権者対応を含む代理が可能 | 事務所により幅がある |
| 司法書士 | 申述書類の作成支援 | 事務所により幅がある |
| 家庭裁判所の手続案内 | 書式や一般的な手続きの案内(個別の法律相談は不可) | 無料 |
| 市区町村の無料法律相談 | 30分程度・初回相談の入口に | 無料 |
※専門家費用は事務所や事案の難易度により異なります。相談時に見積りをご確認ください。
債権者から連絡が来ても、「相続します」「少しずつ払います」といった発言や、相続財産からの一部弁済は避けるべきとされています。「熟慮期間中のため回答を控えます」と伝えるにとどめるのが無難です。
よくある質問
ここでは起算日・期限超過・第三順位・伸長・放棄後の5つの疑問に結論から回答します。
相続放棄はいつまでが期限ですか?死亡日から3か月ですか?
いいえ、原則は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月です(民法915条1項)。死亡を後から知った場合や、先順位者の放棄で相続人になった場合は、その事実を知った時点から数えるとされています。
相続放棄の期限を過ぎたらもう手続きできませんか?
いいえ、事情によっては可能とされています。最高裁 昭和59年4月27日判決の3要件(財産が全く無いと信じた/調査が著しく困難だった/そう信じた相当な理由がある)を満たせば、財産の存在を認識した時から3か月と扱われる余地があります。上申書と証拠を添えた申述と、専門家への相談を検討してください。
第三順位(兄弟姉妹)の期限はいつからですか?
先順位者の放棄によって自分が相続人になったと知った時からの3か月とされています。その日を後から示せるよう、督促状の消印、家裁の照会回答書、親族からの連絡記録を残してください。なお2024年3月開始の戸籍広域交付は兄弟姉妹が対象外のため、戸籍収集に3〜6週間程度を見込んで動く必要があります。
相続放棄の期限は延長できますか?
熟慮期間内に家庭裁判所へ「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てれば延ばせます。申立てができるのは利害関係人または検察官で、費用は相続人1人につき収入印紙800円と連絡用郵便切手です(裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」2026)。伸長幅に法定の上限規定はなく家庭裁判所の裁量ですが、実務解説では1〜3か月程度が中心とされています。
相続放棄が受理されれば、もう覆りませんか?
受理は手続きの入口であり、有効性が最終確定したわけではないとされています。司法統計の集計によれば却下率は0.14%程度と低く、家庭裁判所は明らかな却下理由が無い限りまず受理する運用とされていますが、後日債権者から熟慮期間の経過を争われる可能性は残ります。また放棄後でも隠匿・私的消費・目録への不記載があれば単純承認とみなされます(民法921条3号)。
起算日を特定して証拠を残す、遺産には触れない、間に合わなければ伸長を申し立てる。この3つが期限を守る実質的な条件です。
相続放棄は、取り戻しのきかない判断を短期間で迫られる手続きです。本記事は日本法に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の事情によって結論が変わり得ます。期限が迫っている方、すでに過ぎてしまった方、遺産に手を付けた心当たりのある方は、法テラス・弁護士・司法書士へ早めにご相談ください。
最終確認日: 2026年8月8日




