少額訴訟のやり方|費用8,500円・即日判決までの5手順
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少額訴訟のやり方|費用8,500円・即日判決までの5手順

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「メルカリの代金が支払われない」「敷金・退去費用が返ってこない」——60万円以下のお金のトラブルで有力な選択肢が、簡易裁判所の少額訴訟です。

先に結論をお伝えします。

  • やり方は5ステップ:①管轄の確認→②訴状の作成→③提出・ペイジー納付→④期日の準備→⑤審理・判決
  • 費用は訴額60万円で8,500円(書面申立て/オンラインなら7,400円)。2026年5月21日以降、収入印紙も予納郵便切手も不要です
  • 審理は原則1回・即日判決(民事訴訟法368条1項・370条1項)。申立てから判決までおおむね1〜2か月
  • 落とし穴は「勝った後」:相手が払わなければ自分で差押えを申し立てる必要があり、勤務先を裁判所経由で調べられる債権者は法律で限定されています(民事執行法206条)

この記事は、今日から自分で(本人訴訟で)進める人向けの手順書です。新旧×書面/オンラインの実額早見表、敷金トラブルの進め方、1回の審理を空振りさせない証拠の出し方、そして回収の壁までを一本の流れで解説します。急ぐ方は「5ステップ」の章から読み進めてください。

注意

本記事は一般的な情報提供であり、個別事案への法的助言ではありません。手数料額や運用は改正の移行期で変わり得るため、申立て前に必ず申立て先の簡易裁判所または裁判所ウェブサイトで最新の案内をご確認ください。

結論:少額訴訟のやり方は5ステップ|2026年5月21日以降は「切手なし・ペイジー納付」

少額訴訟は5ステップ・原則1回の審理で即日判決に至り、2026年5月21日以降は切手不要・ペイジー納付に変わりました。

全体の流れは次のとおりです。

  1. 管轄の確認:どの簡易裁判所に申し立てるかを決める
  2. 訴状の作成:裁判所の公式ひな形(10種類)から該当するものを選んで記入する
  3. 提出・納付:窓口・郵送またはオンラインで提出し、手数料は原則ペイジーで納付(切手の予納は不要
  4. 期日の準備:書証の原本と、証人がいれば当日の同行を手配する
  5. 審理・判決原則1回の期日で審理し、即日判決

裁判所公式サイト「少額訴訟」(2026年)によると、少額訴訟は60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて原則1回の審理で紛争解決を図る手続で、判決への不服申立ては異議の申立てに限られ控訴はできません。物の引渡しや謝罪を求める訴えには使えません。

変わった点を、旧制度と並べて整理します。

項目2026年5月20日までの提起(旧法適用)2026年5月21日以降
申立ての方法窓口・郵送(書面)書面またはオンライン(電子)申立てを選択可
手数料の納付収入印紙を訴状に貼付原則ペイジーによる電子納付
郵便費用予納郵便切手を別途納付申立手数料に一本化され切手は不要
訴額60万円の手数料6,000円+切手別途書面8,500円/電子7,400円
代理人の扱い書面可弁護士等の訴訟代理人はオンライン手続が義務化
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(出典:裁判所「改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要」2026年、裁判所「手数料額早見表」2026年)

ポイント

判決はゴールではありません。相手が支払わなければ強制執行を自分で申し立てる必要があり、差押えには相手の口座(金融機関名・支店)や勤務先の特定が要ります。しかも勤務先情報の第三者からの情報取得は、養育費等の扶養義務に係る債権者と生命・身体侵害の損害賠償債権者に限られています(民事執行法206条)。貸金やフリマ代金では、この手段は使えません。

少額訴訟を自分でやる5ステップ|本人訴訟の手順と訴状の書き方

手順は管轄確認→訴状作成→提出・ペイジー納付→期日準備→審理・判決の5つで、自分だけでも公式ひな形で対応できます。

ステップ1:申立先の簡易裁判所を確認する

原則は被告(相手方)の住所地を管轄する簡易裁判所ですが(民事訴訟法4条)、金銭の支払請求では義務履行地として原告の住所地の簡易裁判所に申し立てられる場合もあります(同法5条1号)。管轄は裁判所ウェブサイトの管轄区域表で確認できます。なお簡易裁判所の事物管轄は訴額140万円以下です(裁判所法33条1項1号)。

ステップ2:公式ひな形10種類から選んで訴状を作る

裁判所「少額訴訟で使う書式」(2026年)では、交通事故(物損・人損)・貸金・売買代金・請負代金・売掛代金・賃料・マンション管理費・敷金返還・原状回復費用・汎用の10種類の訴状ひな形がWord形式で公開され、それぞれPDFの記載例が付いています。自分の事案に近いものを選ぶのが最短ルートです。

記入で外せないのが次の3点です。

  • 「少額訴訟による審理及び裁判を求める」旨の申述を記載する(民事訴訟法368条2項)。これを欠くと通常訴訟として扱われます
  • その年に同じ簡易裁判所で少額訴訟を求めた回数を届け出る(民事訴訟規則223条。虚偽の届出は過料の対象です)
  • 「紛争の要点」で済ませず、請求原因まで書き切る(被告が欠席した場合に主張が擬制される場面でも、請求として成り立つ内容にしておくためです)

ステップ3:提出し、手数料をペイジーで納付する

訴状と証拠の写しを提出し、手数料を納付します。2026年5月21日以降は収入印紙の貼付ではなく原則ペイジーによる電子納付で、予納郵便切手は不要です(裁判所「改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要」2026年)。窓口では書記官が形式面を確認してくれるため、初めてなら持参が安心です。オンライン申立てを選べば1,100円安くなりますが、事前のmintsアカウント登録が必要です。

ステップ4:「即時に取り調べられる証拠」だけをそろえる

ここが1回審理を成功させる分かれ目です。少額訴訟では即時に取り調べることができる証拠に限って採用されます(民事訴訟法371条)。実務上の意味は次の2つです。

  • 書証:写しを事前に提出して被告にも送達されるようにし、期日には原本を持参します
  • 証人:国民生活センター『国民生活』2024年11月号(東京簡易裁判所 簡易裁判所判事 園部厚、2024年)によると、証人・本人は第1回期日に同行するなどして出頭する必要があり、裁判所が証人の呼出しをすることはありません

「後から出します」は基本的に通りません。証人に来てもらえないなら、その人の話を陳述書と客観資料で代替できるかを提出前に検討してください。

ステップ5:審理・判決(当日の流れ)

審理は、裁判官と当事者が丸テーブルに着席して進む運用が一般的です。双方の言い分と証拠を確認した後、和解の打診があることも多く、まとまらなければ原則その日のうちに判決が言い渡されます。

まとめ

5ステップの所要期間は合計1〜2か月程度。公式ひな形と書記官の形式面の案内で、自分だけでも十分対応できます。費用に不安がある場合は、法テラスの民事法律扶助で同一問題につき3回まで(1回30分程度)の無料法律相談が利用できます(資力基準等の要件あり/法テラス「民事法律扶助業務」2026年)。

訴状提出から即日判決までの流れ|期日当日は何が起きるのか

即日判決とは審理期日当日の言渡しを指し、訴状提出から期日までは通常1〜1か月半かかります。

申立てから判決までの時系列

時点起きること目安期間
①訴状提出書記官が形式面を確認、手数料をペイジー納付当日
②期日指定裁判所が第1回口頭弁論期日を決める即日〜数日
③被告へ送達訴状副本と呼出状が被告に届く数日〜2週間
④答弁書の提出被告が期日前に答弁書を出す(出さないこともある)期日の1週間前ごろ
⑤審理双方の言い分と証拠を1回で確認提出から1〜1か月半後
⑥和解の打診話し合いがまとまれば和解調書を作成同日
⑦判決まとまらなければ原則その日のうちに言渡し同日
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期日当日の進み方

少額訴訟の審理は、法廷ではなくラウンドテーブル法廷(丸テーブル)で、裁判官と当事者が同じテーブルに着いて進む運用が一般的です。裁判所公式サイト「少額訴訟」(2026年)が示すとおり、審理は原則1回で終わるため、その場で聞かれたことに答えられる準備が要ります。

実際に問われやすいのは次の点です。

  • いつ・誰と・いくらの約束をしたか(契約の成立)
  • その約束が果たされていないこと(履行がない事実)
  • 証拠のどこにそれが表れているか(書証の該当箇所)

手元の書証は、提出順に番号を振り、該当ページに付箋を貼っておくと説明が短時間で済みます。原本を忘れると、その書証の取調べができないまま判断される可能性があります(民事訴訟法371条)。

被告が欠席したらどうなるか

被告が答弁書も出さず期日にも出頭しない場合、原告の主張を自白したものとみなされ、原告勝訴の判決に至るのが通常の流れです。ただしこれは訴状に請求原因が書き切れていることが前提です。「紛争の要点」しか書いていないと、そもそも請求として成り立たないと判断されるおそれがあります。ステップ2で請求原因まで書き切ることを勧めたのは、この場面のためです。

補足

判決に代えて和解が成立した場合、和解調書は確定判決と同一の効力を持ち、そのまま強制執行の債務名義になります。「和解=譲歩して終わり」ではなく、回収手段としての価値は判決と変わりません。

少額訴訟の費用はいくら?新旧×書面/オンライン早見表【2026年最新】

訴額60万円の場合、書面申立て8,500円・オンライン申立て7,400円で、いずれも郵便費用込みです。

少額訴訟の実費・新旧×書面/オンライン早見表

訴額①旧法適用(〜2026/5/20提起)+切手別途②2026/5/21〜 書面申立て③2026/5/21〜 オンライン申立て④オンライン割引(②−③)⑤参考:支払督促(書面/電子)⑥参考:民事調停
10万円まで1,000円3,500円2,400円1,100円3,200円/3,000円400円
20万円2,000円4,500円3,400円1,100円
30万円3,000円5,500円4,400円1,100円
40万円4,000円6,500円5,400円1,100円
50万円5,000円7,500円6,400円1,100円
60万円6,000円8,500円7,400円1,100円5,700円/5,500円2,400円
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※1 被告が2名以上の場合、(被告の数−1)×2,000円が加算されます(旧法にはなかった加算です)。 ※2 納付は収入印紙の貼付ではなく、原則ペイジーによる電子納付です。 ※3 ①欄は2026年5月20日までに提起して係属中の事件用です。これから起こす方は②か③を見てください。 ※4 支払督促・民事調停の金額は新法適用の額です(10万円まで/60万円の値のみ掲載)。

(全数値の出典:裁判所「手数料額早見表」2026年 https://www.courts.go.jp/assets/tesuuryo_hayami.pdf )

表から読み取れる実務上のポイントは3つです。

  • オンライン申立ては全訴額帯で1,100円安い:本人訴訟でも電子申立てを選べます。裁判所「mintsについて」(2026年)によると、民事裁判書類電子提出システム(mints)のアカウントはどなたでも登録できますが、事前のアカウント登録が必要です。
  • 「まず支払督促」の費用優位は縮まった:訴額60万円で比べると、支払督促5,700円に対し少額訴訟8,500円(いずれも書面)。旧制度では3,000円対6,000円+切手でしたから、差額の意味は小さくなっています。異議が出れば通常訴訟に移行する支払督促と、1回で判決が出る少額訴訟の性質差で選ぶ場面が増えました。
  • 被告が複数なら加算を忘れない:連帯保証人も一緒に訴えるなど被告が2名なら+2,000円です。

手数料以外にかかる実費

表の額は裁判所に納める申立手数料です。実際には次の費用も見ておいてください。

  • 内容証明郵便(提訴前に請求する場合):1,500〜2,500円程度
  • 登記事項証明書(相手が法人の場合):600円(窓口交付)
  • 交通費:申立先の簡易裁判所へ最低2回(提出・期日)
  • 証拠のコピー代:数百円程度
注意

手数料額は改正法が適用される事件かどうかで異なり、裁判所の早見表も旧法適用訴訟・書面申立て・電子申立ての3系統が併記されています。古い解説記事の「印紙+切手」表記をそのまま信じず、必ず最新の早見表か窓口で確認してください。

あなたは少額訴訟で行くべきか?5分岐の判定チャート

金額・相手の特定・証拠の即時性・争う姿勢・差押えの当ての5分岐で、最適なルートを判定できます。

分岐①:請求は元本60万円以下の金銭請求か?

  • いいえ → 出口:通常訴訟(簡裁は140万円以下)。なお60万円に削って一部請求する方法は、残額を放棄したと扱われうるため実質的に使えません。物の引渡し・登記・謝罪の請求も対象外です
  • はい → 分岐②へ

分岐②:相手の氏名・住所を訴状に書けるか?

  • いいえ → 訴状が書けません。メルカリ・ヤフオク等の匿名取引では、先に発信者情報開示や弁護士会照会などの特定手続が必要で、費用・期間が本案より重くなることもあります → 事前ステップ:相手の特定(後述の章へ)
  • はい → 分岐③へ

分岐③:第1回期日に即時取り調べられる書証で足りるか/証人を自分で連れて行けるか?

  • いいえ → 証拠調べが制限され(民事訴訟法371条)、裁判所は証人を呼び出しません → 出口:通常訴訟
  • はい → 分岐④へ

分岐④:相手が全面的に争う姿勢か?

  • はい → 被告は第1回口頭弁論で弁論をする前に通常訴訟への移行を申述できます(民事訴訟法373条1項・2項)。争われる前提なら最初から通常訴訟の方が早い場合があります → 出口:通常訴訟または専門家相談
  • いいえ・不明 → 分岐⑤へ

分岐⑤:勝訴後に差し押さえる財産の当てがあるか(口座の金融機関名・支店、または勤務先)?

  • いいえ勤務先(給与債権)の第三者からの情報取得手続は、養育費等の扶養義務に係る債権者と生命・身体侵害の損害賠償債権者に限られます(民事執行法206条)。貸金やフリマ代金では公的に勤務先を突き止める手段がなく、費用倒れのおそれがあります → 出口:民事調停(訴額60万円で2,400円)や法テラス相談(同一問題3回まで無料)で見通しを確認
  • はい → 出口:少額訴訟が有力です。次章から準備を始めましょう

出口は「少額訴訟/通常訴訟/支払督促/民事調停/まず消費生活センター・法テラス」の5つです。

相手が少額訴訟を拒否したら?被告側の作法と、原告側の次の一手

被告は第1回期日で弁論する前なら通常訴訟への移行を申述でき、判決への不服は控訴でなく異議申立てです。

被告側:拒否(通常訴訟への移行)の作法

  • 移行の申述:被告は第1回口頭弁論期日で弁論をする前に、通常訴訟への移行を申述できます(民事訴訟法373条1項・2項)。期日で弁論を始めてしまうと申述できなくなるため、タイミングが重要です
  • 反訴はできない:少額訴訟では反訴が禁止されています(同法369条)。相手にも請求があるなら、別途の手続を検討することになります
  • 判決への不服は異議申立て:控訴はできず(同法377条)、判決書等の送達を受けた日から2週間以内に同じ簡易裁判所へ異議を申し立てます(同法378条、民事訴訟規則222条2項)
  • 異議審の性質:異議後の審理では、一期日審理の原則も証拠調べの制限も適用されません(同法379条1項)。1回で終わらせられなかった主張・立証を、通常の手続で改めて行えます

原告側:拒否されたときの次の一手

移行されても訴えが却下されるわけではなく、通常の手続で審理が続きます。ただし審理は複数回・数か月以上になり、期日ごとに出廷の負担が生じます。参考までに、最高裁判所「裁判所データブック2026」(2026年)によると、簡易裁判所の民事第一審通常訴訟の新受件数は令和7年で436,667件(少額訴訟から通常移行したものを含まない数)で、通常訴訟自体はごく一般的な手続です。

相手が争う姿勢を明確にしているなら、最初から通常訴訟を選ぶか、簡裁訴訟代理権を持つ認定司法書士(請求額140万円以下)・弁護士への相談を検討するのが現実的です。

補足

住所が判明せず公示送達によらなければ被告を呼び出せない場合は、裁判所の職権で通常訴訟に移行します(民事訴訟法373条3項)。

メルカリの少額訴訟のやり方|「相手が誰か分からない」壁の越え方

フリマトラブルは訴状に書く氏名・住所の特定が最初の関門で、ここを越えないと手続に入れません。

匿名配送やニックネーム取引では、訴状に書くべき氏名・住所が分かりません。次の順で越えます。

  1. 証拠を先に確保する:取引画面・メッセージ・商品説明ページ・発送/受取記録を、相手に削除される前にすべてスクリーンショットで保存します
  2. 運営会社に問い合わせる:メルカリやヤフオク(LINEヤフー)に経緯を伝え、相手方情報の開示や取引の仲介を依頼します。開示に応じない場合もありますが、問い合わせ履歴自体が経緯を示す資料になります
  3. 特定手続を検討する:発信者情報開示や弁護士会照会(弁護士法23条の2)などで、電話番号や振込先口座を手がかりに特定できる場合があります。弁護士会照会は弁護士に依頼した場合のみ利用でき、本人訴訟では使えません。特定の費用と期間が請求額を上回ることもあるため、着手前に見通しを確認してください
  4. 特定できたら5ステップへ:以降は前章の手順どおりです。訴状は公式ひな形の「売買代金」または汎用を使います
注意

詐欺が疑われる場合は、警察や消費生活センターへの相談も並行してください。金銭回収と刑事手続は別ですが、相談記録が経緯の裏づけになります。

敷金・退去費用の少額訴訟を自分でやる方法|争点は国交省ガイドラインの区分

敷金・退去費用の争点は原状回復の負担範囲で、写真と精算明細をガイドラインの区分に当てはめて主張します。

国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(2011年)は、通常の使用による損耗(通常損耗・経年劣化)の回復費用は原則として貸主負担とし、借主負担となる範囲についても経過年数を考慮した算定方法を示しています。壁紙や設備には耐用年数の考え方があり、居住年数が長いほど借主の負担割合は下がる設計です。

自分で進めるときの時系列と費用

時期行動費用の目安
1か月目内容証明郵便で返還を請求郵便実費(数千円程度)
1か月目応答なし→証拠を整理(賃貸借契約書・入退去時の写真・精算明細)
2か月目簡易裁判所へ訴状を提出(訴額12万円)書面4,500円/電子3,400円
3か月目期日:審理→判決または和解
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※訴額20万円までの新法手数料で計算しています(裁判所「手数料額早見表」2026年)。旧制度の「印紙2,000円+切手6,000円」ではありません。

請求項目をガイドラインの区分に仕分けする

訴状は裁判所公式ひな形の「敷金返還」または「原状回復費用」を使えます。効果的なのは、精算明細の項目を1つずつ次の3区分に仕分けした一覧を作ることです。

区分負担の考え方
通常損耗・経年劣化日照による畳・クロスの変色、家具設置による床のへこみ原則として貸主負担
借主の故意・過失、善管注意義務違反結露を放置して生じたカビ、taバコのヤニ・臭い、飲みこぼしのシミ借主負担となり得る
経過年数を考慮する対象クロス・カーペット等(耐用年数の経過で負担割合が逓減)居住年数に応じて按分
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(区分の考え方の出典:国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」2011年)

この一覧に、入居時・退去時の写真の該当カットを紐づけておくと、期日での説明が短時間で済みます。入居時の写真がない場合は、契約時の物件状況確認書(チェックシート)や退去立会いの記録が代わりの手がかりになります。

なお少額訴訟では敷金(保証金)返還請求権自体が差押えの対象にもなり得るため、勝訴後の回収まで見据えて相手(貸主・管理会社)の情報も整理しておきましょう。貸主が法人なら登記事項証明書で本店所在地と代表者を確認しておくと、訴状の記載も執行の準備も同時に進みます。

補足

ガイドラインは法律そのものではなく、原状回復の一般的な考え方を示した指針です。ただし裁判実務でも参照されることが多く、特約の有効性を含めて主張の土台になります。契約書に借主負担の特約がある場合は、その内容と説明の有無も併せて確認してください。

第1回期日で終わらせるための準備チェックリスト

提訴前・提出時・当日・判決後の4段階に分けて確認すれば、1回の審理で決着させる準備が整います。

① 提訴前

  • [ ] 裁判所公式ひな形10種類(交通事故・貸金・売買代金・請負代金・売掛代金・賃料・マンション管理費・敷金返還・原状回復費用・汎用)から該当するものを選ぶ(裁判所「少額訴訟で使う書式」2026年)
  • [ ] 相手の氏名・住所を確認する(法人なら登記事項証明書で商号・本店・代表者を確認)
  • [ ] その年に同じ簡易裁判所で少額訴訟を求めた回数を確認する(年10回まで/民事訴訟規則223条。虚偽の届出は過料)
  • [ ] 元本が60万円以下か確認する(利息・遅延損害金などの附帯請求は訴額に算入しません/民事訴訟法9条2項)

② 提出時

  • [ ] 訴状に「少額訴訟による審理及び裁判を求める」旨の申述を記載する(民事訴訟法368条2項)
  • [ ] 紛争の要点だけでなく請求原因まで書き切る(被告欠席時にも成り立つ内容にする)
  • [ ] 書証は写しを事前提出し、被告にも送達されるようにする
  • [ ] 手数料をペイジーで納付し、控えを保管する(収入印紙・予納郵便切手は不要
  • [ ] 被告が2名以上なら加算額(被告数−1)×2,000円を含めて計算する

③ 期日当日

  • [ ] 書証の原本を持参する(民事訴訟法371条)
  • [ ] 証人がいれば自分で同行する(裁判所は証人を呼び出しません/国民生活2024年11月号)
  • [ ] 分割払い・支払猶予の判決(言渡日から3年以内/民事訴訟法375条)を受け入れるかの方針を決めておく
  • [ ] 被告が通常訴訟移行を申述した場合の想定問答を用意する(民事訴訟法373条1項・2項)
  • [ ] 和解案を提示された場合に応じる下限額を決めておく

④ 判決後

  • [ ] 異議申立ての期間(判決書等の送達から2週間以内)を確認する(民事訴訟規則222条2項)
  • [ ] 支払がなければ少額訴訟債権執行を検討する(申立手数料4,000円/東京簡易裁判所「少額訴訟債権執行」2026年)
  • [ ] 電子債務名義なら送達証明書は不要(紙の債務名義の場合は正本・送達証明書・資格証明書等が必要)

少額訴訟の強制執行のやり方|差し押さえられるもの・使えない手段

判決後の回収は少額訴訟債権執行(申立手数料4,000円)で行い、差押えには財産の特定が前提になります。

少額訴訟債権執行:判決を出した簡易裁判所でそのまま申し立てる

裁判所公式サイト「少額訴訟」(2026年)によると、少額訴訟の判決や和解調書等については、判決等をした簡易裁判所においても金銭債権に対する強制執行(少額訴訟債権執行)を申し立てることができます。東京簡易裁判所「少額訴訟債権執行」(2026年)によると、申立先はその簡易裁判所の裁判所書記官で、差押えの対象は預貯金債権、給料債権、賃料債権、敷金(保証金)返還請求権などです。申立手数料は債権者1名・債務者1名・債務名義1通の場合4,000円です。

必要書類は債務名義が紙か電子かで変わります。紙の債務名義では正本・送達証明書・資格証明書等が必要ですが、電子債務名義(電子化された少額訴訟判決・和解調書等)なら送達証明書が不要になりました(2026年5月〜)。

「給料を差し押さえられる」が使えない場合がある

差押えの申立てには、預金なら金融機関名・支店、給与なら勤務先という具体的な特定が必要です。ここで多くの読者がつまずきます。

相手の財産が分からないときの制度として財産開示手続と第三者からの情報取得手続がありますが、勤務先(給与債権)に関する情報取得の申立てができるのは、養育費等の扶養義務に係る請求権を持つ債権者と、生命・身体の侵害による損害賠償請求権を持つ債権者に限られます(民事執行法206条)。つまり、フリマの代金や個人間の貸金、敷金返還といった一般の金銭債権では、この手段で勤務先を突き止めることはできません。

最高裁判所「裁判所データブック2026」(2026年)によると、財産開示事件の新受件数は令和元年577件から令和5年に22,022件まで急増した後、令和6年16,177件・令和7年13,567件と2年連続で減少しています。一方、第三者からの情報取得事件は令和7年で8,355件、債権執行事件は令和7年で177,028件でした。制度は整備されてきましたが、誰でも同じように使えるわけではないという点は押さえておく必要があります。

「回収の当て」は訴える前に記録しておく

現実的な備えは、取引や契約の過程で相手の情報を残しておくことです。

  • 振込を受けた/した口座の金融機関名・支店名(明細を保存)
  • 相手が話していた勤務先や事業所の名称
  • 法人なら登記事項証明書で本店所在地と代表者
  • 賃貸トラブルなら管理会社・貸主の情報(敷金返還請求権も差押えの対象になり得ます)

なお給与には差押えが制限される範囲があるなど、執行には細かなルールがあります。具体的な進め方は申立て先の簡易裁判所や専門家に確認してください。

まとめ|実額・証拠の即時性・回収の当てを、提訴前に確認する

少額訴訟は新料金・証拠の即時性・回収の当ての3点を提訴前に確認すれば、1〜2か月での決着を狙えます。

  • 少額訴訟は60万円以下の金銭請求に使える簡易裁判所の手続で、審理は原則1回・即日判決、控訴はできず異議申立てのみです(民事訴訟法368条1項・370条1項・377条・378条)
  • 2026年5月21日以降は切手不要・ペイジー納付。訴額60万円なら書面8,500円/オンライン7,400円で、オンラインは全訴額帯で1,100円安くなります(裁判所「手数料額早見表」2026年)
  • 即日判決は「審理期日当日の言渡し」を意味し、訴状提出から期日までは通常1〜1か月半かかります
  • 証拠は即時に取り調べられるものに限られます(同法371条)。書証は写しを事前提出+原本を当日持参、証人は自分で同行(裁判所は呼び出しません)
  • 被告は第1回期日で弁論する前なら通常訴訟へ移行を申述でき(同法373条1項・2項)、反訴は禁止(同法369条)です
  • 勝訴後は少額訴訟債権執行(4,000円)で差押えを申し立てますが、一般の債権者は勤務先情報の第三者取得ができません(民事執行法206条)。口座や勤務先の当てを提訴前に確認しましょう
ポイント

迷ったら、法テラスの無料法律相談(同一問題につき3回まで・1回30分程度/資力基準等の要件あり)、市区町村の無料法律相談、消費生活センターで見通しを確認してから動くのが安全です。

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次に読むと、この記事の判断がしやすくなります。

よくある質問

個人での申立て可否や拒否された場合など、よく検索される8つの疑問に結論から簡潔にお答えします。

少額訴訟は弁護士に頼まず自分だけで申し立てられますか?

はい、本人による申立てが可能です。裁判所が用途別に10種類の訴状ひな形と記載例を公開しており、窓口では書記官が形式面を案内してくれます。2026年5月21日以降は本人でも書面かオンラインかを選べます(オンラインは事前のmintsアカウント登録が必要/裁判所「mintsについて」2026年)。ただし事案が複雑な場合や相手が争う姿勢の場合は、弁護士や簡裁訴訟代理権を持つ認定司法書士(請求額140万円以下)への相談を検討してください。

訴状を出してから判決までどのくらいかかりますか?

提出から第1回期日までがおおむね1〜1か月半、審理はその日1回で、判決は原則として同じ日に言い渡されます。合計の目安は1〜2か月です。「即日判決」は訴状提出当日の判決という意味ではなく、審理をした期日のその日に判決が出るという意味です。被告が通常訴訟への移行を申述した場合や、和解の協議が続く場合はこれより長くなります。

少額訴訟の費用は結局いくらですか?収入印紙は要らないのですか?

2026年5月21日以降に提起する場合、訴額60万円で書面申立て8,500円・オンライン申立て7,400円です(裁判所「手数料額早見表」2026年)。郵便費用が一本化されたため予納郵便切手は不要で、納付は収入印紙の貼付ではなく原則ペイジーによる電子納付です。被告が2名以上なら(被告数−1)×2,000円が加算されます。2026年5月20日までに提起した事件は旧法の額(訴額60万円で6,000円+切手別途)が適用されます。

相手が少額訴訟を拒否したらどうなりますか?

被告は第1回口頭弁論期日で弁論をする前に、通常訴訟への移行を申述できます(民事訴訟法373条1項・2項)。移行しても訴えが却下されるわけではなく、通常の手続で審理が続きます。ただし審理は複数回・数か月以上になり得るため、相手が全面的に争うと分かっている場合は、最初から通常訴訟や民事調停、専門家への相談を検討するのが現実的です。なお少額訴訟では反訴はできません(同法369条)。

敷金の返還を少額訴訟で請求する場合、何が決め手になりますか?

精算明細の各項目が「通常損耗・経年劣化(原則貸主負担)」「借主の故意・過失」「経過年数を考慮する対象」のどれに当たるかを、入居時・退去時の写真と対応づけて示すことです(国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」2011年)。入居時の写真がない場合は、契約時の物件状況確認書や退去立会いの記録が手がかりになります。訴状は公式ひな形の「敷金返還」または「原状回復費用」を使えます。

勝訴後の強制執行のやり方は?給料は差し押さえられますか?

判決等をした簡易裁判所の裁判所書記官に少額訴訟債権執行を申し立てます(申立手数料4,000円/東京簡易裁判所「少額訴訟債権執行」2026年)。対象は預貯金・給料・賃料・敷金返還請求権などですが、申立てには金融機関名・支店や勤務先の特定が必要です。勤務先情報の第三者からの情報取得は養育費等の扶養義務に係る債権者と生命・身体侵害の損害賠償債権者に限られるため(民事執行法206条)、一般の貸金やフリマ代金では裁判所経由で勤務先を調べることはできません。

60万円を超える請求はどうすればよいですか?

少額訴訟は使えないため、簡易裁判所の通常訴訟(140万円以下)や地方裁判所への訴え、支払督促を検討します。60万円に切り分けて一部だけ請求する方法は、残額を放棄したものと扱われうるため実質的には使えません。分割して請求したい事情がある場合は、事前に専門家へ確認してください。

分割払いの判決になることがあるのですか?

あります。裁判所は被告の資力等を考慮して、判決言渡しの日から3年を超えない範囲で支払猶予・分割払い・遅延損害金の免除を定める判決をすることがあります(民事訴訟法375条/国民生活2024年11月号)。満額一括での回収を前提にしていると想定と異なる結果になり得るため、申立て前に織り込んでおきましょう。

補足

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案への法的助言ではありません。手数料や運用は移行期で変わり得ます。具体的な対応は、申立て先の簡易裁判所、弁護士・司法書士などの専門家、または法テラスにご確認ください。

最終確認日:2026年8月24日

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