遺言書の書き方と注意点|無効になる10の落とし穴と2026年改正
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遺言書の書き方と注意点|無効になる10の落とし穴と2026年改正

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「遺言書 書き方 注意点」で最初に押さえるべき結論は、全文・日付・氏名の自書と押印(民法968条1項)という形式4点を満たし、そのうえで「法務局が中身までは見てくれない」という前提で自分で内容を詰めることです。注意点は大きく、形式で無効になる落とし穴と、有効なのに手続きで止まる落とし穴の2種類に分かれます。

この記事では、初めて書く方がつまずきやすい注意点を「無効になる10の落とし穴」として先にまとめ、そのうえで例文・比較・FAQまで一気に確認できるようにしています(2026年8月時点の法令・公表データに基づきます)。

ポイント

先に結論だけ知りたい方へ。①本文は手書き、②日付は年月日を数字で、③押印は現時点で必須、④財産は登記事項証明書・通帳どおりに特定、⑤遺言執行者を指定。この5つを外さなければ、致命的な失敗はほぼ防げるとされています。

2026年6月17日に成立した民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)により、押印の任意化と「保管証書遺言」(デジタル遺言)の創設が決まりました。法務省の公表によると、押印の任意化等は公布日(2026年6月24日)から1年以内、保管証書遺言の創設等は公布から3年以内に施行される予定です。つまり「今書くべきか、改正を待つべきか」という判断も、2026年時点の注意点のひとつになっています。

遺言書の書き方の注意点一覧:無効になる10の落とし穴

遺言書の注意点は、形式で無効になる5点と、有効でも手続きが止まる5点に整理できます。まず全体像を一覧で確認してください。

#落とし穴どうなるか正しい対応
1本文をパソコンや代筆で作成自筆証書遺言として無効本文は全文を手書き。例外は財産目録のみ
2「令和8年8月吉日」と書く日付不特定で無効(最判昭和54年5月31日)年月日を数字で正確に記載
3押印を忘れる現行方式では要件を欠く認印でも可。任意化の施行は未了
4財産目録に署名押印しない目録部分が無効になる恐れ全ページに署名押印(両面記載なら両面)
5訂正を自己流で行うその訂正がなかったものとされる(民法968条3項)訂正より書き直しが安全
6不動産を住居表示だけで書く相続登記が受理されない恐れ所在・地番・家屋番号を登記事項証明書どおりに
7預貯金を「○○銀行の預金」とだけ書く銀行窓口で特定不能とされる恐れ支店名・種別・口座番号まで記載
8遺言執行者を指定しない預貯金解約に相続人全員の関与が必要な場面がある執行者と権限を明記
9相続人以外へ「相続させる」と書く登録免許税が0.4%→2.0%になる恐れ相続人以外には「遺贈する」
10遺言の存在を誰にも伝えない発見されず分割協議が終わる恐れ法務局保管+指定者通知(最大3名)
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「無効の注意点」と「使えない注意点」は別物

1〜5は遺言そのものが効力を失う形式リスク、6〜10は遺言は有効でも相続手続きの現場で止まる実務リスクです。市販の書式どおりに書いても、後者は防げません

法務省民事局「遺言書保管制度の利用状況」(2026)によると、令和2年7月から令和8年7月までの累計で保管申請は127,253件(保管件数126,976件)に達しています。形式面は制度で守れるようになった一方、内容面は書き手に委ねられたままです。

注意

押印の任意化は要件の「緩和」です。いま押印して作成した遺言書が、改正の施行によって無効になるわけではないと考えられます。健康や年齢に不安がある方は、待たずに書くのが基本方針になります。

結論:遺言書は「まず1通、現行方式で書いて法務局へ」が最短ルート

2026年8月時点の最短ルートは、自筆証書遺言を現行方式(押印あり)で作成し、法務局の保管制度(手数料3,900円)に預けることです。改正待ちは無遺言リスクを増やします。

なぜ「待つ」より「今書く」が基本なのか

改正の施行日は政令待ちで、最長で2029年6月まで確定しません。その間に相続が開始すれば遺言はゼロ扱いです。

法務省「民法等の一部を改正する法律について」(2026)によると、施行時期は以下のとおりです。

改正内容施行時期2026年8月時点の状況
自筆証書遺言等の押印の任意化公布(2026年6月24日)から1年以内遅くとも2027年6月までに施行予定、具体日は政令待ち
保管証書遺言(デジタル遺言)の創設公布から3年以内遅くとも2029年6月までに施行予定
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日本財団「遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査」(2023年、生命保険文化センター掲載)によると、60〜79歳で遺言書を作成済みの人は3.5%(公正証書遺言1.5%、自筆証書遺言2.0%)にとどまり、「近いうちに作成予定」は12.2%でした。「予定」のまま相続が始まる層が厚いことが読み取れます。

今日から始める4ステップ

最初の1通は、財産の棚卸しから完成まで実質2〜3週間で形にできるとされています。

  1. 財産と相続人の棚卸し:登記事項証明書、通帳、証券口座、ネット銀行、保険を一覧化します。戸籍で相続人を確定します。
  2. 配分方針を決める:遺留分(民法1048条)に配慮しつつ、誰に何を渡すかを決めます。
  3. 本文を自書する:全文・日付・氏名を手書きし、押印します。財産目録のみパソコン作成が可能です。
  4. 法務局に保管申請する:本人が予約のうえ出頭し、3,900円を納付します(法務省「自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧」2026)。
まとめ

迷ったら「現行方式で1通書く→法務局に預ける→改正施行後に必要なら書き直す」。遺言はいつでも書き換えられるため、完璧な1通を待つより、有効な1通を持つ方が実利があります

主な原因を深掘り:なぜ遺言書は「使えない」ことになるのか

遺言書が使えなくなる原因は、(1)形式不備による無効、(2)財産や受取人の特定不足、(3)相続開始後の手続き設計漏れの3層に分かれます。

原因1:形式不備(民法968条の要件を外す)

自筆証書遺言は全文・日付・氏名の自書と押印が必須で、パソコン作成・代筆・音声は無効とされています。

日付については、最高裁判所の判例が明確な線を引いています。

日付が「昭和47年7月吉日」と記載された自筆証書遺言は、暦上の特定の日を表示するものといえないとして無効とされました(最判昭和54年5月31日)。

一方で、令和3年1月18日の最高裁判決では、入院中に全文・日付・氏名を自書し、退院後9日目(自書から27日後)に押印した事案について、真実の成立日と相違する日付が記載されていても直ちに無効とはならないと判断されています。日付は「特定できるか」が争点であり、機械的な一致だけが問題ではないことが分かります。

なお、財産目録についてはパソコン作成や通帳コピーの添付が認められています(民法968条2項、2019年1月13日施行)。ただし目録の全ページに署名押印が必要で、両面に記載がある場合は両面に必要とされています。

注意

「令和8年8月吉日」「2026年8月末日」といった表記は避けてください。年月日を数字で正確に書くのが安全とされています。

原因2:財産と受取人の特定不足

特定不足は、遺言が有効なまま手続きだけが止まる典型パターンです。

  • 不動産:住居表示(○○町1-2-3)ではなく、登記事項証明書どおりの所在・地番・家屋番号で書きます。マンションは敷地権の表示まで写します。
  • 私道・持分:自宅前の私道持分や、未登記の物置・増築部分が漏れやすい箇所です。
  • 預貯金:金融機関名・支店名・預金種別・口座番号まで書きます。
  • デジタル資産:ネット銀行、ネット証券、暗号資産、電子マネーは通帳がないため、存在自体が把握されない恐れがあります。

原因3:相続開始後の設計漏れ

遺言執行者を指定していないと、預貯金の解約に相続人全員の関与が必要になる場面があるとされています。仲が良くない相続人がいる場合、ここで実質的に手続きが止まります。

また、法務省民事局「遺言書保管制度の利用状況」(2026)によると、令和2年7月から令和8年7月までの累計で、遺言書の保管申請は127,253件(うち保管件数126,976件)に達している一方、相続人等による遺言書情報証明書の交付請求は12,890件、遺言書保管事実証明書の交付請求は17,203件にとどまっています。制度開始から日が浅く相続開始前の遺言が多いことが主因ですが、「預けた数」と「実際に使われた数」には大きな開きがあるという事実は押さえておきたいところです。

ポイント

遺言書は「書く文書」ではなく「相続手続きで使う道具」です。銀行の窓口担当者や登記官が、迷わず処理できる粒度で書けているかを基準にしてください。

原因別の見分け方:あなたの遺言はどのリスクを抱えているか

法務局が確認するのは形式(自書・日付・氏名・押印・様式)のみで、内容の有効性・遺言能力・財産の特定精度・遺留分侵害は確認されないとされています。ここが最大の誤解ポイントです。

法務局が「チェックしてくれない」12項目チェックリスト

左が法務局の審査範囲、右が自分で確認するしかない項目です。右列にひとつでも×があれば、相続手続きで詰まる可能性があります。

法務局が確認する項目(形式)法務局が確認しない項目(内容)と、詰まる場面
全文が自書されているか(1)不動産を登記事項証明書どおりの所在・地番・家屋番号で特定したか → 住居表示のみだと相続登記が受理されない恐れ
日付が年月日で記載されているか(2)私道持分・未登記建物を書き漏らしていないか → 漏れた分だけ遺産分割協議が必要になる
氏名が自書されているか(3)預貯金を金融機関名+支店名+種別+口座番号まで特定したか → 銀行窓口で「特定不能」とされる恐れ
押印があるか(改正施行後は任意化予定)(4)ネット銀行・ネット証券・暗号資産・電子マネーを列挙したか → 存在に気づかれず放置される
A4サイズ・片面のみの記載か(5)相続人には「相続させる」、相続人以外には「遺贈する」と書き分けたか → 登録免許税が0.4%対2.0%で5倍変わる
余白(上5mm・下10mm・左20mm・右5mm)が確保されているか(6)遺言執行者を指定したか → 未指定だと預貯金解約に相続人全員の関与が必要になる場面がある
全ページに通しページ番号があるか(7)遺言執行者の権限(解約・払戻し・登記申請・貸金庫開扉)を明記したか → 銀行で権限不足を指摘される
ホチキス留めをしていないか(8)受遺者が先に死亡した場合の予備的条項を入れたか → その条項が失効し分割協議に戻る
消えにくい筆記具を使っているか(9)「その他一切の財産」の受取人を定めたか → 記載漏れ財産で協議が必要になる
財産目録の全ページに署名押印があるか(10)遺留分(民法1048条)を侵害していないか、侵害する場合の負担順序を指定したか → 侵害額請求で紛争化
本人が出頭しているか(本人確認)(11)財産目録の全ページに自書署名+押印をしたか(両面記載なら両面とも) → 目録部分が無効になる恐れ
様式の体裁が整っているか(12)相続登記3年ルール(2024年4月1日施行)を付言で伝えたか → 受遺者が期限を知らず過料の対象になる恐れ
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様式要件は法務省「自筆証書遺言書保管制度 03 遺言書の様式等についての注意事項」(2026)によるもので、余白部分には一切何も書いてはならないとされています。

リスクの切り分け方

  • 形式リスクが高い人:自分で調べながら書いた、日付や押印を後回しにした、市販の便せんに書いた。
  • 内容リスクが高い人:不動産を複数持つ、事業用資産や非上場株がある、相続人以外に渡したい先がある。
  • 後工程リスクが高い人:相続人が3人以上、疎遠な相続人がいる、取引金融機関が複数ある。
注意

「法務局に受理された=有効な遺言」ではありません。法務省の案内でも、保管制度は遺言書の内容の有効性を保証するものではないと明示されています。内容面は専門家の確認をおすすめします。

具体的な解決方法:自筆証書遺言の書き方を例文で確認する

自筆証書遺言の書き方は、(1)表題、(2)財産ごとの条項、(3)包括条項、(4)遺言執行者、(5)予備的条項、(6)付言、(7)日付・住所・氏名・押印の順に組み立てるのが標準的とされています。

遺言書の書き方 例文(基本形)

以下は自筆証書遺言の全文を手書きする場合の例です。実際の作成では、氏名・生年月日・不動産の表示・口座番号をご自身の情報に置き換えてください。

``` 遺言書

遺言者 山田太郎は、次のとおり遺言する。

第1条 遺言者は、遺言者の有する次の不動産を、遺言者の長男 山田一郎 (昭和55年4月1日生)に相続させる。

所在 東京都○○区○○町一丁目 地番 12番3 地目 宅地 地積 120.45平方メートル

所在 東京都○○区○○町一丁目12番地3 家屋番号 12番3 種類 居宅 構造 木造かわらぶき2階建 床面積 1階 60.12平方メートル 2階 48.60平方メートル

第2条 遺言者は、遺言者の有する次の預金債権を、遺言者の長女 佐藤花子(昭和58年9月15日生)に相続させる。

○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号1234567 ○○信用金庫 ○○支店 定期預金 口座番号7654321

第3条 遺言者は、遺言者の内縁の妻 鈴木和子(昭和35年3月3日生、 住所 東京都○○区○○町二丁目3番4号)に、金300万円を遺贈する。

第4条 遺言者は、前各条に記載のない一切の財産を、長男 山田一郎に 相続させる。

第5条 万一、長男 山田一郎が遺言者の死亡以前に死亡したときは、 第1条および第4条により同人に相続させるとした財産は、同人の長男 山田健太(平成20年1月10日生)に相続させる。

第6条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として次の者を指定する。

住所 東京都○○区○○町三丁目4番5号 職業 弁護士 氏名 田中次郎 生年月日 昭和45年6月20日

2 遺言執行者は、本遺言の執行に関し、遺言者名義の預貯金の解約、 払戻し、名義変更、貸金庫の開扉および内容物の受領、 不動産の所有権移転登記の申請その他本遺言の執行に必要な一切の 権限を有する。

第7条(付言事項) 長年連れ添った家族に感謝しています。一郎には自宅と祭祀を、 花子には預金を残しました。不動産の名義変更は、取得を知った日から 3年以内に申請する義務があります。速やかに手続きをしてください。 家族が争うことなく過ごしてくれることを願っています。

令和8年8月8日

住所 東京都○○区○○町一丁目12番3号 遺言者 山田太郎 印 ```

上記例文の第6条2項に含めた「貸金庫の開扉」の表記は、実務上、銀行の手続きで権限の明示を求められる場面があるためのものです(表現は各金融機関の運用により異なることがあります)。

「相続させる」と「遺贈する」の書き分け

書き分けの基準はシンプルで、相続人には「相続させる」、相続人以外には「遺贈する」です。

項目相続人へ「相続させる」相続人以外へ「遺贈する」
不動産の登録免許税0.4%2.0%(5倍)
相続登記の申請取得する相続人の単独申請が可能とされる原則として遺言執行者または相続人全員と受遺者の共同申請
対象になる人配偶者・子・親・兄弟姉妹など法定相続人内縁の配偶者・孫(代襲相続人でない場合)・友人・法人・団体
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2,000万円の不動産で計算すると、0.4%なら8万円、2.0%なら40万円です。書き方ひとつで32万円の差が生まれます。

補足

孫や兄弟姉妹の子など「相続人かどうか」がケースによって変わる立場の人もいます。戸籍で相続人の範囲を確定してから文言を選ぶのが確実です。

遺言書の書き方 自筆の実務ポイント

自筆で書くときは、書き損じの訂正が最大の落とし穴です。訂正は民法968条3項の方式に従う必要があり、方式違反があるとその訂正がなかったものとされます。

実務上は、訂正するより最初から書き直す方が安全とされています。以下の順で進めるとやり直しが減ります。

  1. 下書きをパソコンやメモで作り、財産の表示を登記事項証明書・通帳と1文字ずつ突き合わせます。
  2. 法務局保管を前提にする場合は、A4の白紙に余白(上5mm・下10mm・左20mm・右5mm)を鉛筆で薄く印を付けて位置を確認します。
  3. 消えにくい筆記具(ボールペン・万年筆)で清書します。鉛筆や消せるボールペンは避けます。
  4. 全ページに「1/3」形式のページ番号を余白内ではなく本文領域内に記載します(余白には何も書けません)。
  5. ホチキス留めはせず、クリアファイル等で保管します。

ケース別の対処:あなたはどの方式を選ぶべきか

方式選びは、健康や年齢に不安があれば即・現行方式、内容が複雑なら公正証書、それ以外は自筆+法務局保管という順で判定するのが実務的です。

判定チャート:今すぐ書くか、改正を待つか(2026年8月時点)

上から順に答えていき、YESが出た時点で終了してください。

Q1. 健康状態や年齢に不安がありますか?

  • YES今すぐ書く。現行方式(自筆+押印)で作成し、法務局へ保管申請します。改正待ちは無遺言リスクが上回ります。
  • *今書いた遺言は改正後も有効か*:押印任意化は要件の緩和であり、押印済みの遺言が無効になるわけではありません。
  • NO → Q2へ

Q2. 手指の障害や印鑑の紛失などで、押印が物理的に困難ですか?

  • YES → 押印任意化の施行(公布2026年6月24日から1年以内=遅くとも2027年6月)を待つ選択肢があります。ただし施行日は政令待ちのため、暫定的に現行方式で作成し、施行後に書き直すのが安全とされています。拇印や第三者の補助による押印が可能かは、専門家に相談してください。
  • *今書いた遺言は改正後も有効か*:有効です。押印がある遺言は改正後も要件を満たします。
  • NO → Q3へ

Q3. 相続人以外への遺贈、事業承継、非上場株など、内容が複雑ですか?

  • YES公正証書遺言を検討します。2025年10月1日施行の改定後の手数料令に基づく費用を、公証役場で事前見積もりしてもらいます。
  • *今書いた遺言は改正後も有効か*:公正証書遺言はもともと押印の論点が異なり、改正の影響を受けにくい方式です。
  • NO → Q4へ

Q4. 資産がデジタル中心で、パソコン入力での作成を希望しますか?

  • YES → 保管証書遺言(デジタル遺言)の施行は公布から3年以内=遅くとも2029年6月です。ただし待つ間は無遺言状態であり、その間に相続が開始すれば遺産分割協議になります。まず自筆+法務局保管で1通用意し、施行後に切り替えるのが現実的です。
  • *今書いた遺言は改正後も有効か*:有効です。新方式ができても旧方式が失効する仕組みにはなっていません。
  • NO自筆証書遺言+法務局保管(3,900円)が費用対効果の面で標準解になります。

4方式フル比較表(2026年8月時点・改正法反映)

比較項目①自筆証書+自宅保管②自筆証書+法務局保管③公正証書遺言④保管証書遺言(デジタル遺言)
初期費用0円3,900円(保管申請1件)目的価額に応じた基本手数料+遺言加算13,000円(目的価額1億円以下、2025年10月改定後)未定
相続開始後の費用0円(ただし検認費用が別途)遺言書情報証明書1通1,400円×必要通数謄本交付の実費未定
家庭裁判所の検認必要不要不要不要
紛失・改ざんリスク高い(発見されない恐れ)低い(原本を法務局が保管)低い(原本を公証役場が保管)低い見込み
無効リスクの残り方形式・遺言能力の両方形式のみ法務局が確認。内容と遺言能力は未確認公証人が関与し最も低いとされる未定
押印の要否改正施行後は任意同左不要不要
本人の出頭不要本人が法務局へ出頭必須公証役場または出張対面またはウェブ会議で全文口述が要件
年間利用実績統計なし2025年22,550件/2026年1〜7月15,513件2025年(令和7年)123,891件
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利用実績には対照的な動きが出ています。法務省民事局の月次データから集計すると、法務局保管の申請は2026年1〜7月で15,513件と、前年同期の12,778件から約21%増加しました。一方、日本公証人連合会(2026年3月23日公表)によると、遺言公正証書の作成件数は令和6年128,378件から令和7年123,891件へ、前年比約3.5%(4,487件)減少しています。低コストな法務局保管に流れが向いていることがうかがえます。

ポイント

④の保管証書遺言は「完全オンライン完結」ではありません。時事ドットコムの報道(2026年4月3日、閣議決定時)によると、本人が対面またはウェブ会議で法務局の担当職員に全文を口述することが要件とされる設計です。手軽さを期待しすぎない方がよいでしょう。

モデルケースで総額を実額計算する

条件は、遺産3,200万円(自宅2,000万円+預貯金1,200万円)、相続人は子2人、取引金融機関3行とします。

費用の内訳A案:自筆+法務局保管B案:公正証書遺言C案:遺言なし
作成時コスト0円+保管申請3,900円=3,900円目的価額ごとの基本手数料(子2人分を区分計算)+遺言加算13,000円+謄本用紙代1枚300円×枚数+(出張時)日当・出張加算0円
相続開始後コスト遺言書情報証明書1,400円×4通(登記用1・銀行3)=5,600円、検認0円謄本交付の実費遺産分割協議書の作成費用+相続人全員の実印・印鑑証明取得費
揉めた場合の追加コスト遺留分侵害額請求への対応費同左(ただし遺言能力を争われにくい)遺産分割調停(申立て1,200円+郵便切手)、専門家費用、長期化コスト
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A案は作成から相続手続き完了まで合計9,500円です。これに自宅の相続登記にかかる登録免許税2,000万円×0.4%=80,000円が加わります。

B案の基本手数料は、相続させる財産の価額を「受け取る人ごと」に区分して算定し合計するルールになっています。正確な金額は財産の内訳で変わるため、公証役場に財産一覧を持参して事前に見積もりを取るのが確実です。2025年10月1日施行の改定で、目的価額1億円以下の遺言加算は11,000円から13,000円に上がった一方、目的価額500万円以下の区分が新設され(50万円以下は3,000円)、小規模な遺言の負担は下がりました(日本公証人連合会 2025)。

C案は一見0円ですが、最高裁判所「令和6年 司法統計年報 3 家事編」によると、遺産分割事件のうち遺産価額5,000万円以下の事案が全体の約76〜78%を占めています。揉めるのは資産家だけではないというのが統計の示すところです。

結論:A案とC案の差は、作成時点で見れば実質3,900円です。この3,900円で、検認手続きと分割協議のリスクを外せると考えると費用対効果は高いといえます。

予防・再発防止のコツ:書いた後に効く5つの設計

遺言を確実に機能させる鍵は、(1)発見される仕組み、(2)遺言執行者、(3)予備的条項、(4)遺留分への配慮、(5)定期的な見直しの5点です。

1. 発見される仕組みを作る(指定者通知)

法務局の保管制度には、遺言者の死亡を法務局が把握した際に、あらかじめ指定した人へ通知する「指定者通知」があります。

法務省からのお知らせ(2023年、日本税理士会連合会掲載)によると、令和5年10月2日から運用が拡大され、従来は相続人・受遺者・遺言執行者等のうち1名限定だったところ、対象者の限定がなくなり最大3名まで指定可能になりました。保管申請時に必ず設定しておきましょう。

2. 遺言執行者を必ず指定する

遺言執行者がいれば、預貯金の解約や登記申請を単独で進められる場面が広がります。指定は相続人の1人でも構いませんが、利害対立が予想される場合は弁護士・司法書士などの第三者が無難とされています。

3. 予備的条項を入れる

受遺者が遺言者より先に亡くなった場合、その条項は効力を生じないとされています。「万一○○が遺言者の死亡以前に死亡したときは、△△に相続させる」の1文を入れておくと、分割協議への逆戻りを防げます。

4. 遺留分を織り込んで配分する

遺留分を侵害しても遺言自体は無効になりませんが、侵害額請求を受ける可能性があります。民法1048条により、この請求権は相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年、相続開始から10年で消滅します。2019年7月1日施行の改正で、遺留分減殺請求から金銭債権としての侵害額請求に変更されました。

意図的に法定相続分と異なる配分をする場合は、付言事項でその理由を丁寧に書いておくと、感情面のこじれを減らせるとされています。

5. 5年に一度、または節目で見直す

財産構成や家族関係が変われば遺言も陳腐化します。以下のタイミングで見直しをおすすめします。

  • 不動産の売却・購入、金融機関の統廃合や口座の解約
  • 相続人の死亡、婚姻、離婚、養子縁組
  • 押印任意化の施行(遅くとも2027年6月)および保管証書遺言の施行(遅くとも2029年6月)
補足

法務局保管の場合、保管申請の撤回や住所等の変更の届出は手数料無料です(法務省 手数料一覧 2026)。書き直しのハードルは高くありません。なお保管期間は、原本が死亡後50年、画像データが死亡後150年とされています。

専門家・公的情報の見解:一次情報はどこを見ればよいか

遺言書に関する信頼できる情報源は、法務省(制度・様式・手数料)、日本公証人連合会(公正証書の件数・手数料)、裁判所(判例・司法統計)の3つに集約されます。

押さえておきたい公的データ(2026年8月時点)

項目数値出典
保管申請の累計(令和2年7月〜令和8年7月)127,253件(保管件数126,976件)法務省民事局「遺言書保管制度の利用状況」(2026)
遺言書情報証明書の交付請求(累計)12,890件同上
遺言書保管事実証明書の交付請求(累計)17,203件同上
遺言公正証書の年間作成件数令和7年123,891件(令和6年128,378件)日本公証人連合会(2026年3月23日公表)
保管申請の年間推移2024年23,419件/2025年22,550件/2026年1〜7月15,513件法務省民事局データより集計
60〜79歳の遺言書作成率作成済み3.5%/作成予定12.2%日本財団(2023年、生命保険文化センター掲載)
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法務省「遺言書保管制度の利用状況」は月次で更新されるため、最新値は公表PDFでご確認ください。

手数料の一次情報(法務省 2026)

  • 保管申請:1件3,900円
  • 遺言書情報証明書の交付:1通1,400円
  • 遺言書保管事実証明書の交付:1通800円
  • 閲覧:モニター1回1,400円/原本1回1,700円
  • 保管申請の撤回・変更の届出:無料

相談先の使い分け

相談内容主な相談先
制度の手続き・様式・予約法務局(遺言書保管所)の窓口・専用ダイヤル
公正証書遺言の作成・費用見積もり最寄りの公証役場
不動産の特定・相続登記を見据えた文面司法書士
相続税を含む配分設計税理士
遺留分・相続人間の対立が予想される場合弁護士
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注意

本記事は一般的な情報を整理したものであり、個別の法的助言ではありません。財産構成や家族関係によって最適な方式や文面は変わります。実際の作成にあたっては、法務局および弁護士・司法書士・税理士等の専門家にご相談ください。

やってはいけないNG対応:これをやると手続きで止まります

遺言書で避けるべきNGは、本文のパソコン作成、日付の不特定表記、余白への書き込み、遺言執行者の未指定、家族への完全な秘匿の5つです。

NG1:本文をパソコンや代筆で作成する

自筆証書遺言は全文の自書が要件です。パソコン・代筆・音声・動画は無効とされています。例外は財産目録のみで、その場合も全ページに署名押印が必要です(民法968条2項)。

NG2:「令和8年8月吉日」と書く

最判昭和54年5月31日により、「吉日」表記は暦上の特定の日を表示しないとして無効とされました。年月日を数字で書いてください。

NG3:法務局保管用の遺言書の余白に何かを書く

余白(上5mm・下10mm・左20mm・右5mm)には一切何も書けません。ページ番号も余白内ではなく本文領域に記載します。ホチキス留めも不可です(法務省 2026)。

NG4:遺言執行者を指定しないまま完成させる

未指定でも遺言は有効ですが、預貯金の解約に相続人全員の関与が必要になる場面があります。「無効ではないが実行できない」遺言の典型です。

NG5:遺言の存在を誰にも伝えない

自宅保管で誰も知らなければ、発見されずに遺産分割協議が終わってしまう恐れがあります。法務局保管の場合は指定者通知(最大3名)を必ず設定し、家族には「法務局に預けてある」という事実だけでも伝えておきましょう。

番外:受遺者への「その後」の伝達漏れ

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。政府広報オンライン/法務省によると、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象となり、施行日前に発生した相続にも遡って適用されます。付言事項で一言触れておくと、受け取る側の負担が減ります。

まとめ

NGの多くは「知らなかった」で起きます。本文は自書、日付は年月日、余白は空白、執行者は指定、存在は共有。この5点を最終チェックにしてください。

よくある質問

最後に、遺言書の書き方・注意点で特によく検索される疑問に、結論から簡潔にお答えします。

遺言書の注意点で、いちばん多い失敗は何ですか?

形式面では日付と押印、内容面では財産の特定不足です。「自宅を長男に」「○○銀行の預金を長女に」といった書き方は、有効でも手続きで止まる恐れがあります。不動産は登記事項証明書どおりの所在・地番・家屋番号、預貯金は金融機関名・支店名・種別・口座番号まで書いてください。

「遺言状」と「遺言書」の書き方に違いはありますか?

違いはありません。「遺言状」は日常的な呼び方で、民法上の用語は「遺言」または「遺言書」です。どちらの呼称でも、自筆証書遺言であれば全文・日付・氏名の自書と押印という要件は同じです。ただし、書面の表題としては「遺言書」と書くのが一般的とされています。

自筆証書遺言はパソコンで作成できますか?

本文はできません。全文の自書が必要で、パソコン作成の本文は無効とされています。例外は財産目録のみで、2019年1月13日施行の民法968条2項により、目録はパソコン作成や通帳コピーの添付が認められています。その場合も全ページに署名押印(両面記載なら両面とも)が必要です。なお2026年6月成立の改正で創設される保管証書遺言では電子データでの作成が可能になりますが、施行は公布から3年以内(遅くとも2029年6月)です。

書き間違えたときは、二重線と訂正印で直してよいですか?

自己流の訂正は避けてください。訂正は民法968条3項の方式(変更の場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更の場所に押印)に従う必要があり、方式を外すとその訂正はなかったものとされます。1文字の書き損じでも、最初から書き直すのが安全とされています。

遺言書に印鑑は必要ですか?実印でないとダメですか?

2026年8月現在は押印が必要で、実印でなくても認印で有効とされています(法務省の案内でも実印である必要はないとされています)。ただし本人性を示す観点から実印+印鑑証明書を添える例もあります。押印の任意化は2026年6月成立の改正で決まりましたが、施行は公布(2026年6月24日)から1年以内=遅くとも2027年6月であり、施行日は政令待ちです。それまでは押印してください。

法務局に預ければ、遺言の内容は有効だと保証されますか?

保証されません。法務局が確認するのは形式(自書・日付・氏名・押印・様式)のみで、内容の有効性・遺言能力・財産の特定精度・遺留分侵害は確認されないとされています。保管制度は紛失や改ざんを防ぎ検認を不要にする仕組みであり、内容の適法性を担保するものではありません。内容面は専門家に確認してもらうのが安全です。

遺言書を書き直したいときはどうすればよいですか?

新しい日付で作り直せば、内容が抵触する部分について前の遺言は撤回したものとみなされます(民法1023条)。法務局保管の場合、保管の撤回や変更の届出は手数料無料です(法務省 2026)。混乱を避けるため、古い遺言書は撤回のうえ処分し、法務局に預けている場合は撤回手続きを取ってから新しい遺言を保管申請するのが確実です。

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遺言書の書き方と注意点は、形式4点(全文・日付・氏名の自書と押印)を守り、法務局が見てくれない中身を自分で埋めることに尽きます。冒頭の「10の落とし穴」に一つも当てはまらなければ、大きな失敗はまず避けられます。2026年6月成立の改正で押印任意化とデジタル遺言が決まりましたが、施行は最長で2029年6月まで待つことになります。健康や年齢に不安がある方は、待たずに現行方式で1通書き、3,900円で法務局に預けるのが現時点の合理的な選択です。

次の一歩として、まずは登記事項証明書と通帳を手元に集め、財産一覧を作るところから始めてみてください。そのうえで、内容面は弁護士・司法書士・税理士、手続き面は法務局や公証役場にご相談ください。

本記事の最終確認日:2026年8月8日。法令・手数料・統計は改正や更新により変わる可能性があるため、実際の作成時は法務省および日本公証人連合会の公表情報で最新の内容をご確認ください。

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